トランプ支持者は、なぜ「ロシア疑惑」を許すのか - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2018年7月17日 16時0分
ところが、共和党の中でも「トランプ支持派」と言われる議員たち、特に今年の11月に中間選挙での改選を控えている議員たちからは、今回の米ロ首脳会談に対する批判はあまり聞こえてきません。つまり、トランプの「コアの支持者」は、このような対ロシア外交についても大統領を支持しているのです。
トランプの「コア支持層」といえば、「アメリカ・ファースト」というか、大統領が2017年1月の就任式に際して述べたように「アメリカ・ファースト・オンリー」という考え方の人々です。保守的で、愛国的であり、まさに「国家への忠誠心」を宗教のように大切にする人々です。そんなグループが、どうして「ロシアとの癒着疑惑」を許しているのでしょうか?
その理由は3つあると思います。
1つは、大統領の言い分を100%支持しているということです。ですから、CNNは「フェイク・ニュース」であり、FBIや特別検察官の捜査は「ディープ・ステート(アメリカの隠された本流としての権力グループ)」の陰謀だと思っているのです。
2つ目は、大統領が「個人の才覚」で「ディールしている」という、パフォーマンスを支持していることです。大統領が「ディール」で問題を解決していく限りにおいては、相手は「癖のある悪者」でも構わないわけで、そうした「クセのあるリーダー」と「対等に渡り合っているトランプ」は、NATOやG7などで同盟国に支援ばかりして、肝心の中国や北朝鮮、ロシアとの関係改善はできなかった過去の大統領より優れているというのです。
3つ目は、ではトランプのコアの支持者は、大統領を「王様のように尊敬して忠誠を誓っている」のかというと、そうではありません。また「自由と民主主義を信じていない」のかというと、これも違います。彼らは、あくまで主権者であり、その投票行動でトランプを支えたり、嫌いなヒラリーを負かしたりすることで、有権者としての自分が世界の中心であることを確認したいのです。
ですが、そうした「自由と民主主義」はアメリカだけのもので良く、他の世界はどうでもいいと思っています。むしろ、独裁者さえ「トップ交渉」で味方にできるのであれば、交渉相手は独裁国家の方が簡単でいいと思っています。移民や難民を迫害しても平気なのは、合衆国憲法の基本的人権は独立戦争や開拓で苦労した先人の末裔である「アメリカ市民」だけに適用されると考えているからです。
こうした異常な感覚が「アメリカ・ファースト」という発想の裏にあり、その発想から「プーチンという独裁者と対等に渡り合うトランプ」に対して喝采を送り、それを批判している政治家やメディアを「偽善者」と憎悪しているのです。
その意味で、今回の米ロ首脳会談というのは、いかにもトランプらしいものだったと言えるでしょう。反対派がいかに口を極めて批判しても、コアの支持者の大統領への信頼は揺らがないのです。
【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きをウイークデーの朝にお届けします。ご登録(無料)はこちらから=>>
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
ヨーロッパで徴兵制復活の動き、ドイツ国防相「兵役停止は誤りだった」…デンマークなどは女性も対象
読売新聞 / 2024年4月30日 7時20分
-
プーチン氏が停戦交渉拒めば、トランプ氏はウクライナ支援強化も 元米国務省特別代表ネグリア氏
産経ニュース / 2024年4月23日 17時43分
-
中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月18日 15時57分
-
プーチンを相手に「ヒトラー宥和政策」の失敗を繰り返すのか? 当時よりもひどいトランプ一派
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月11日 21時26分
-
トランプ前大統領が内々に語る「ウクライナ終戦」の秘密計画...日本にも危機が及ぶ「戦争の終わらせ方」
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月9日 17時31分
ランキング
-
1台湾地震1か月、花蓮の観光客激減・夜市は閑散と…「惨たんたる状況だ」
読売新聞 / 2024年5月4日 18時34分
-
2要衝陥落「時間の問題」 兵器不足、交渉も視野
共同通信 / 2024年5月5日 7時43分
-
3ガザ休戦、詰めの駆け引き ハマス、カイロで交渉開始
共同通信 / 2024年5月5日 0時12分
-
4習近平氏が5日から5年ぶりに訪欧、米国の対中圧力に対抗 欧州の足並み乱す狙いも
産経ニュース / 2024年5月4日 19時48分
-
5「完全に失敗」の対ロシア制裁に、新たな手段 中国経由の抜け道封じに一定の成果、さらなる課題も
47NEWS / 2024年5月5日 10時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください