日本が追求するべきは日朝会談の実現か、「名誉ある孤立」か
ニューズウィーク日本版 / 2018年7月27日 16時40分
中国の動きを利用できる
会談が実現したとしても、そこで北朝鮮がどのような態度に出るのか、また日朝間で何らかの合意が成立した場合、その着実な履行をどのように担保するのか――などのジレンマに日本が直面するリスクは極めて高い。かといって原則論を貫き対話を拒み続ければ、日本は朝鮮半島の将来をめぐる議論で蚊帳の外に置かれたまま、コストだけ負担させられる可能性が高くなる。
では、日本はどうするべきか。1つ確実なのは、日朝会談を追求する前に、中韓と意思疎通を図ることが重要ということである。特に6月の米朝会談での合意内容の履行のためには、比較的早い段階で合意履行に関する協議の多国間化が必然となる。
幸か不幸か現在、中国は通商問題でトランプ政権との緊張が高まっている。韓国も米韓FTAの再交渉問題はもちろん、在韓米軍の将来について対米関係が微妙な状態にある。既に中国は年末までに北朝鮮情勢について話し合う日中韓首脳会談の主催に意欲を見せている。これに先んじる形で日本が音頭を取って会談を呼び掛けることは十分可能だ。ロシアもあえて不参加を選択することはないだろう。
このような状態を考えると、安倍政権にとって現実的なのは日朝会談の追求ではなく、ウラジオストクで日・中・韓・ロが北朝鮮情勢を議論する場を設けることなのかもしれない。
<本誌2018年7月31日号掲載>
辰巳由紀(米スティムソン・センター東アジア共同部長、キャノングローバル戦略研究所主任研究員)
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