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ヨーロッパによみがえった奴隷貿易

ニューズウィーク日本版 / 2018年8月20日 15時30分

犯人はスペインのサンセバスチャンを中心に、ビルバオ、マドリード、フランスに拠点を持ち、金品の密輸と同じく「注文」を受け付けていたという。



マリ、セネガル、コートジボワール、ギニアなどフランス語圏に募集グループがあり、旅行会社を装い、ヨーロッパでの仕事を斡旋するともちかけて代金を支払わせる。陸路、地中海沿岸までいき、別のグループに引き渡され、少人数で小型船でスペインに渡る。

偽のパスポート・身分証明書書類でスペインに入国すると、スペイン国内の組織に引き渡されてバスク地方まで移動する。ここからフランス国境を越えて「買主」の組織に渡されるのだ。

国境を越えるには、バスや鉄道のほか、タクシーも使われる。1台に5人乗せ、タクシー業者は一人当たり150ユーロ(2万円)の報酬を受け取ったという。

こうして密輸された移民は、農場で闇労働させたり、乞食のグループに入れられたりする。「フランス、英国、ドイツでは4、5人のアフリカ人を買い、教会やスーパーマーケットの入り口で物乞いさせたり、馬小屋ではたらかせたりする」と、ラジオのEurope1でスペインの不法移民対策局情報部長は言う。働けたとしても、労働したとしても、イタリアの例よりももっとひどくて、月に100ユーロもらえるかどうかだという。

警察発表によれば、このルートで密輸されたのは300人程度。これは氷山の一角だ。

フォジアの農業労働者の声に対してイタリアのマテオ・サルビーニ内相は「マフィアの仕業だ、断固とした措置を取る」としながらも「移民が来るからこんな業者がはびこるのだ」と持ち前の移民批判を忘れなかった。

スペインの奴隷貿易も、出稼ぎしたくてお金を払ったアフリカ人が悪いのだろうか。


[執筆者]
広岡裕児
1954年、川崎市生まれ。大阪外国語大学フランス語科卒。パリ第三大学(ソルボンヌ・ヌーベル)留学後、フランス在住。フリージャーナリストおよびシンクタンクの一員として、パリ郊外の自治体プロジェクトをはじめ、さまざまな業務・研究報告・通訳・翻訳に携わる。代表作に『EU騒乱―テロと右傾化の次に来るもの』(新潮選書)、『エコノミストには絶対分からないEU危機』(文藝春秋社)、『皇族』(中央公論新社)他。

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広岡裕児(在仏ジャーナリスト)


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