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トランプ「最悪の日」にわかったこと:探せばまだまだボロは出そうだ

ニューズウィーク日本版 / 2018年8月23日 17時30分

これはトランプの抱える弱みだ。濁った水をたたえた深く広い「トランプ湖」で釣りをすれば、必ず獲物がかかる。ニューヨークでの不動産取引、カジノ経営、テレビ出演、そして政界進出と、トランプの長い経歴には、訴訟絡みの詳細な記録が残っている。彼が渡り歩いてきたのはいずれも清廉潔白とは言い難い業界だ。トランプは米金融界の最大手クラスの投資銀行を敵に回し、誰もが尻込みするような国々で自身の名を冠した大規模な不動産開発をやってきた。その過程では、ロシア、ウクライナ、中国など腐敗にまみれた国々からも資金を集めてきた。



起訴はないが弾劾はある

その過程で、トランプ自身が不正行為に手を染めたかと言えば、われわれの知る限り、答えはノーだ。トランプの周辺はどうか。現時点で、少なくとも2人が罪を犯したことは分かった。ほかにも疑わしき人物がいるかどうかはムラーの捜査チームと神のみぞ知るだが、これまでの獲物だけでも、十分な成果と言える。

だからこそトランプは、世論という名の法廷で、ムラーの捜査そのものに有罪判決を下そうとしてきた。大統領就任中トランプは起訴されず、従って有罪となる心配もない。だが弾劾される可能性はある。弾劾は政治的なプロセスだから、世論を味方につければ免れることは可能だ。

目標は単純だと、中間選挙に向けた集会などを取り仕切っているトランプの顧問は言う。トランプを「激怒させている」ムラーの捜査の信頼性を貶めればいい。そのためには、そもそも誰が、何のために、この捜査を始めたかを有権者に思い出させることだ。

トランプとその取り巻きによれば、捜査を始めたのは、「打倒トランプ」に燃えるオバマ時代の「ディープ・ステート(国家の内部で国家を動かしている機関)」の官僚たち。つまりジェームズ・コミー、ピーター・ストローク、アンドルー・マケーブら、ロシア疑惑の捜査に絡んでトランプに解雇されたり、辞任に追い込まれたりしたFBIの元幹部や捜査官だ。

かつてないツイート攻勢が始まる

トランプ政権はまた、トランプの外交顧問だったカーター・ページの捜査に関しても、FBIの「権力乱用」を声高に批判してきた。FBIは、真偽の怪しい「スティール文書」に名前があっただけで、外国情報監視法に基づいて裁判所からページに対する監視盗聴令状をとったというのだ。おまけにトランプ政権は、ムラーとローゼンスタインの「利益相反」まで問題にしている。ムラーはコミー前FBI長官と親しかったから、トランプがコミーを解雇したことが「司法妨害」に当たるかどうかを公正に捜査することはできないし、コミー解雇を正当化するメモをトランプに提出していたローゼンスタインが、ムラーの捜査を公正に監視できるはずがないというのだ。

FOXニュースの視聴者には、こうした主張は既におなじみだ。それでも中間選挙に向けて「音量を最大限に上げて」、ムラーの捜査の不公正さをアピールする必要があると、トランプの顧問は言う。「楽しみにしてほしい。(大統領は)これからかつてないツイート攻勢を始めるはずだ」

ムラーがまだまだ大物を釣り上げそうな状況では、それくらいしか対抗しようがない。

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ビル・パウエル(本誌シニアライター)


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