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嫌われることを気にしない中国人 「Mr.嫌われ力」の勝算と誤算

ニューズウィーク日本版 / 2018年9月4日 17時45分

卓越したビジョンと他人の評価を気にしない「嫌われ力」ゆえ、鄧は中国のトップに立った。その彼が最も「嫌われ力」を発揮したのが、ほかでもない89年6月4日の天安門事件だった。



国際社会の注視と圧力をものともせず、民主化を求める学生と市民を武力で鎮圧した真意は謎とされる。ただ、ハーバード大学名誉教授のエズラ・ボーゲルは著書『現代中国の父 鄧小平』(邦訳・日本経済新聞出版社)の中で、鄧の言葉をこう引用している。「弾圧をするのは、改革開放を継続して中国を現代化するために平和で安定した環境が必要だからだ」

中国は天安門事件後、「平和で安定した環境」の下で世界史上例を見ない規模の経済成長を達成した。EV(電気自動車)が世界一普及し、キャッシュレス社会がどの国よりも早く庶民の現実になった今の中国を見れば、鄧はさぞ満足だろう。自らの価値観の正しさを証明するこれ以上の例はない、と。

ただし、「嫌われること」を気にしないあまり、中国は世界でも有数の「嫌われる国」になってしまった。他国の価値観や指摘に開き直るその姿勢は、国際社会でひんしゅくを買っている。怒涛の成長が続く間、あるいはその余韻が十分残っているうちはいい。しかしスピードが鈍ったときには、他国の「報復」が待ち構えている。

その点はさすがの鄧も予想していなかったかもしれない。

※本誌9/11号(9/4発売)「『嫌われ力』が世界を回す」特集はこちらからお買い求めになれます。



長岡義博(本誌編集長)


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