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NAFTA再交渉「カナダ抜き」の屈辱 ナイーブ過ぎたトルドー首相

ニューズウィーク日本版 / 2018年9月4日 19時30分

その指摘にも一理ある。一貫性のない不満をぶちまけたり交渉姿勢をコロコロ変えたりするトランプに対して、トルドーは時に貿易問題まで得意の社会正義の問題であるかのように扱った。たとえば2017年には、トロントで開催された女性の権利をテーマにした会議の場では、ジャーナリストに対して、NAFTAを改定するならジェンダーの平等の全面的な保証が盛り込まれるべきだと発言した。カナダの交渉担当者は先住民の権利についての一章もNAFTAに追加しようとしているとも報じられた。こんな提案にトランプ政権が乗ってくると思うこと自体がナイーブと言われる所以だ。

「無傷」での危機克服に期待も

米メキシコ貿易協定についての報道に、カナダは危機感を覚えている。合意の草案に、自動車部品の域内調達率の引き上げなどカナダが反対してきた条項がが含まれているだけではない。国家のメンツの問題として、自国を除く二カ国がまとめた合意をおとなしく受け入れて署名するのは、カナダにとって耐えがたい屈辱だ。

それでも、危機感はあるがまだパニックにはなっていない。8月末のカナダのS&Pトロント総合指数はおおむね横ばいを維持。カナダ・ドルの価値も(1カナダ・ドル=約0.77米ドル)1カ月前と変わらない。これはトルドーが──そしてもっと重要なことにカナダが──その尊厳にも経済にも傷を付けることなく、この危機を乗り越えられるという期待があるからかもしれない。期待の理由3つを紹介しよう。

まずNAFTA再交渉の「期限」は8月31日とされてきたが、カナダはさほど焦っていない。それは、新たな貿易協定は米連邦議会の承認を受ける必要があり、そのプロセスには何カ月もの時間がかかる可能性があるからだ。うまくすれば、審議が行き詰まる可能性もある。



一連のプロセスに連邦議会が携わるという事実は、トルドーにとってかなり有利だ。トランプが大統領に選出された瞬間から、トルドーのチームはワシントンでさまざまな工作をし、アメリカの議員や企業のロビイスト、州知事の間に貿易促進派の強力なネットワークを築いてきたからだ。既に彼らの一部が、米メキシコ貿易協定やカナダに対する最後通牒に抗議し始めている。共和党のパトリック・トゥーミー上院議員はトランプに対して「トランプ政権はカナダと合意に達するべきだ」と主張、「NAFTAはそもそも3カ国の合意に基づく協定だ」と警告した。

第二に、アメリカとメキシコの合意のなかで金額的に最も大きい条項の1つは、自動車の40~45%は時給16ドル以上を稼ぐ労働者によって作られなければならない、というもの。これは低賃金のメキシコから高賃金のカナダに生産をシフトさせるもので、カナダに有利だ。

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