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韓国から始まったeスポーツの熱狂

ニューズウィーク日本版 / 2018年9月12日 17時30分

<一般スポーツにも負けないゲーム競技の、人気の火付け役は「スタークラフト」>

7月末、ニューヨークのバークレイズ・センターに新タイプのアスリート数十人が集った。彼らの競う種目は......ビデオゲーム「オーバーウォッチ」だ。

ブリザード・エンターテインメント社の大ヒット作であるこのオンラインシューティングゲームのファン1万人以上も詰め掛け、国際プロリーグ「オーバーウォッチ・リーグ(OWL)」を見守った。最終戦を戦ったのは、フィラデルフィア・フュージョンとロンドン・スピットファイアーの2チームだった。

eスポーツと呼ばれるコンピューターゲーム競技は、この10年で急拡大している。オランダの調査会社ニューズーによれば、市場規模は昨年の6億9600万ドルから、2020年までに15億ドルに倍増するとみられている。

とはいえ、eスポーツが一夜にして成功を遂げたわけではない。そのルーツは数十年前にさかのぼる。

カリフォルニア州に本社を置くゲーム制作会社ブリザードは91年、マイク・モーハイムと数人の開発者によって設立された。「オーバーウォッチ」のほか「ウォークラフト」「ハースストーン」「ディアブロ」などのヒットで、20年以上にわたりeスポーツのトップに君臨。ただし、その躍進は完全なる偶然で、それもモーハイムの思いもよらない場所で始まった。韓国だ。

多人数参加型の原型に

モーハイムらがブリザードを成長させようとしていた頃、韓国では政府主導で高速ブロードバンドの整備が進んでいた。90年代にはPCバンと呼ばれる24時間営業のネットカフェが各地に誕生。高機能パソコンに手軽にアクセスできる店は大いににぎわった。そこで客がこぞって楽しんだゲームが、ブリザードが98年に発表した「スタークラフト」だ。

「最善の状況だった」と、モーハイムは本誌に語った。「ユーザーは誰が最強なのかに注目するようになり、トッププレーヤーは有名人になった」。「スタークラフト」は、全販売本数の半分近くに当たる450万本を韓国で売り上げた。

銀河系を舞台に人間、エイリアン、宇宙人の3種族が戦うこのSF軍事戦略ゲームは、eスポーツの重要な要素となるものも先駆けて利用した。世界中の誰とでもインターネットで直接つながり、対戦できる内蔵ソフトウエアだ。多人数参加型オンライン対戦の形式はさらに進化し、今日のゲーム界の中心を成している。



いくつものキーボードとマウスを同時に駆使するすご腕のスタークラフト・プレーヤーたちは、名声と富を手にした。LGやサムスンなどの韓国企業も、スポンサーに名乗りを上げた。

ディズニーはOWLと複数年契約を結び、傘下のスポーツ専門ケーブルテレビ局ESPNで今年7月から試合を放映。決勝の模様を3日間にわたって計10時間中継し、視聴者の45%を18~34歳の若年層が占めた。

eスポーツは今や、NBAやNFLといった従来のスポーツリーグとゲームの世界との垣根を取り払いつつある。近い将来、両者の違いはほとんどなくなるかもしれない。

熱狂の火付け役になったのは「スタークラフト」だと、モーハイムは考えている。「eスポーツ人気は必然的なものだった」と、彼は言う。「でも『スタークラフト』なしには、ここまで急速に広がることはなかっただろう」

<本誌2018年9月4日号掲載>



スティーブン・アサーチ

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