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酸攻撃に遭い地獄を見た女性「誰にも醜いとは言わせない」

ニューズウィーク日本版 / 2018年9月21日 20時15分

<酸攻撃で負傷した外見を「ひどく醜い姿」と新聞に書かれたことで、彼女は従来の美しさの基準を塗り替える大胆な行動に出た>自信に満ちた現在

地獄のような苦痛はそれだけで終わらなかった。全身に硫酸を浴び、着ていた服はボロボロだ。病院では、硫酸を洗い落とすのに使う塩水を切らしていた。清潔な水を求めて駆け込んだホテルにも、入室を拒否された。結局、プールで5時間シャワーを浴び続けた。

彼女はその後、ロンドンの病院に2カ月入院し、60回超の手術を受け、セラピーに通った。友人全員が大学に進学したが、彼女は顔と全身に負った傷の治療をしなければならなかった。事件の恐ろしい記憶が、常に脳裏に付きまとった。



事件から5年経ち、ジーの境遇は大きく変わった。大学を卒業し、大学院への進学も決まった。自信に満ち、リラックスして見える彼女の目下の悩みは、どこにでもいる23歳の女の子と同じだ。「私の髪、ベタついてませんか?」──インタビューでカメラを回し始めたときも、そんなことを気にしていた。



事件後、実はジーはもう一つ、忘れられない衝撃に襲われた。



「ひどく醜い姿」──英デイリーメール紙がジーの悲劇を報じる見出しに使った言葉だ。ジーは、この言葉に奮い立った。メディアがもつ旧態依然とした美しさの基準を変えなければ、と思ったのだ。

「そんな言葉を目にするのが当たり前になっている。それが他人にどんな影響を及ぼすか、誰も考えようとしない」と、ジーは言う。

「体や顔が変形した人に対するメディアの扱いは間違っている。外見の捉え方を正常に戻す必要がある。外見で人を批判するのはやめなければならない」

そこで彼女は、過激な行動に出た。インスタグラムで、「世間的には美しいとは言えない自分の画像を投稿してくださいと呼び掛けた」のだ。ハッシュタグは、「#settingthestandard(新しい基準を作ろう)」だ。

想像した以上に多くの投稿が集まった。「丸2日間はインスタ漬けだった」と、彼女は振り返る。世界中から投稿がきた。皆が、ジーのハッシュタグとともに自分が最も隠したかった写真を投稿してくれた。

「オーストラリアとか、地球の反対側からもメッセージをもらえるなんて、本当に素敵。でもいちばん素敵なのは、私のしたことが他の人の助けにもなったこと」と、彼女は言う。

恐ろしい経験の後で、なぜ自信を回復できたのか。「時間のおかげ」と、ジーは言う。「自分の気持ちを正直に話せる家族や友人がそばにいてくれた」

(翻訳:河原里香)

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