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温暖化でグリーンランドの氷が初めて分解

ニューズウィーク日本版 / 2018年9月25日 16時0分

<夏にも溶けることがない北極圏の氷の「最後のとりで」、グリーンランド北方の海がついに溶解>

グリーンランドの北方の海はいつも凍っていて、夏にも解けることがない。だから地球温暖化が問題視されるなか、北極圏の氷の「最後のとりで」と呼ばれている。

だが最近撮影された衛星写真から、地球上の海でも指折りに古くて厚いはずのこの海域の氷が、バラバラになっていることが分かった。

8月第1週に撮影された画像を見ると、氷が分解してグリーンランドの北岸から離れていっている。これまで確認されたことのない現象だ。

今年2月と8月初めの異常な高温によって、氷が風に流されやすくなったとみられる。こうした現象が見られたのは、70年代に衛星写真が活用されるようになってから初めてだ。

氷の分解によって大陸上の氷の融解も進むことを、専門家は危惧している。「以前は、北極圏の氷のほとんどが多年氷だった。しかし最近はどんどん減って、ほとんどの氷が一年氷になっている」と、英ケンブリッジ大学で極域海洋物理学グループを率いるピーター・ワダムズ教授は英インディペンデント紙に語っている。

同地域の温度は今年初めから不安定で、気候学者は懸念を強めている。氷量(全海面に対して密集した海氷が占める比率)の減少に加えて、海面が拡大することによって「ホットハウス・アース」現象を引き起こすフィードバックにつながる恐れも指摘されている。

極域の氷の融解は、温暖化によってどんどん加速している。米国雪氷データセンターによれば、81〜10年の平均と比べると、現在の極域の海氷は88万平方キロも縮小している。

ホッキョクグマが餓死?

極域の温暖化は、それ以外の地域の2倍の速さで進んでいる。極域の氷はバラバラになり、大西洋側から太平洋側に吹く風がグリーンランド北岸の氷を運び去っている。

「氷が流されやすくなっているのは、以前より薄くなっている証拠だ。グリーンランド北方の重い氷の『最後のとりで』も、北極圏の他の海域と同じくらい流されやすくなっている」と、ワダムズは言う。



こうした変化がホッキョクグマに与える影響を、専門家は憂慮している。ワダムズによれば、ホッキョクグマがどれほど深刻な影響を受けているか、今はまだよく分からない。来年の春にホッキョクグマが冬眠から目覚める時期になれば、はっきりするという。

「ホッキョクグマはあまり遠くまで泳げない。氷が岸から遠くなれば、氷の上で餌を探すホッキョクグマは生きていけなくなってしまう」と、ワダムズは説明する。

8月20日、NASAはグリーンランド周辺の海域に探査装置を投入し、氷の融解と海面変動の調査を続けると発表した。この調査は16年から行われているものだ。「2年来の変化が今も続いているかどうか、氷がさらにグリーンランドの岸から離れているかどうかが分かるだろう」と、調査に参加しているNASAのジェット推進研究所(JPL)のジョシュ・ウィリスは言う。

研究チームは250個の探査装置を、海中約900メートルの深さに沈める。探査装置は深く沈みながら、温度や塩分濃度などを計測する。

その結果から、温度の上昇と氷の融解の影響が細かく判明することを、研究者たちは期待している。


[2018.9.18号掲載]
アビー・インターランテ

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