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日本の地面師詐欺は、アメリカの「タイトル保険」で防げる - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2018年10月18日 16時0分

また、不動産ローンを組んだ場合、アメリカの不動産ローンというのは「ノン・リコース」といって、仮にローンが破綻した場合は担保物件を差し出せば、債務残額は免除されるのが普通です。ということは、過去に遡って所有権に問題があった場合は、その欠損分は買主からローンの貸し手に行くことになります。

そこで、通常の不動産取引の場合には、「買主のリスク」に対処する「タイトル保険」と「ローン貸主のリスク」に対する「タイトル保険」の双方を同時に付保することが普通です。その保険料は、「一回払い」で「住宅一軒で1000ドル(12万円)前後」というのが相場(州によっても、そして価格によって変動します)であり、「買主」のための保険料は、「売主」が負担し、「ローン貸主」のための保険はローンを借りる「買主」が負担するのが普通です。

こうした保険料は、売買契約と住宅ローン契約の一連の決済の中に含めて清算することになっていて、売買に立ち会う弁護士などが全体を取りまとめて手続きをしてくれるのが通例です。個人の住宅購入だけでなく、法人による大型の物件購入の場合は保険も大型になりますが、基本は同じことです。

日本の場合は、とりあえず法務局による国営の登記制度がある以上は、それを疑うことを前提とした「タイトル保険」という商品を作るのは難しいかもしれません。ですが、アメリカの「タイトル保険」というのは、単に保険によって損害のリスクを回避するだけではなく、保険会社がこの「タイトル保険」の保険料を算定するために「タイトル・レポート」という対象物件に関する所有権と担保設定の「可能性」に関する詳細な報告書を作る、そこに重要な点があります。

この「タイトル・レポート」作成のために、調査員と調査体制が存在し、また専門の弁護士が活動しているのです。そのノウハウに関しては、日本でも何らかの形で、学んで導入することはできると思います。

とは言え、今回の品川区の物件については、時価100億円という物件が約60億で入手できるという商談であったわけで、その信ぴょう性についてはキチンと手間暇とコストをかけるのがプロの仕事のはずです。そのリスク評価が必要だという部分は、「タイトル保険」とか「タイトル・レポート」といった制度のない日本でも、まったく同じだと思います。

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