火山灰のコンクリートが都市の省エネを促進
ニューズウィーク日本版 / 2018年10月23日 18時0分
<セメント製造にかかるエネルギーを大幅に削減できる――火山灰の建築素材への混合の試みが始まった>
彼ら研究者たちが実現を目指しているのは、コンクリートのビルを火山灰でいっぱいにすること。噴火による建物被害の話ではない。壁に火山灰を埋め込んで、より強靭でエコなビルを造ろうという試みだ。
マサチューセッツ工科大学(MIT)やクウェート科学研究所のチームは、火山灰とコンクリートの混合素材を使った特殊な建築を目指し、研究を進めている。この素材はコンクリート製造にかかるエネルギーを削減し、強度を上げられるという。
専門誌ジャーナル・オブ・クリーナー・プロダクションに彼らが発表した素材は、粉砕した火山岩と、ポルトランドセメントと呼ばれる通常のコンクリートとを混合した物質。混合比率を半々にした場合、例えば一区画のコンクリートビル26棟でエネルギーを16%削減できる。
「ポルトランドセメントができるまでには、石灰岩の収集、粉砕、処理、製造と、多くの過程が必要になる」と、論文の筆頭筆者クナル・カプウェイドパティルは言う。「かなりのエネルギー集約型の製造過程だ。だが火山岩の場合は火山岩を集め、砕いて火山灰にするだけだ」
ポルトランドセメントは世界の二酸化炭素排出量の約5%に関わっている。製造過程で大量の熱が必要だからだ。対する火山灰は、製造に熱を使わない。
研究チームは多種多様な火山灰を異なる大きさにし、セメントとさまざまな比率で混合した。研究結果によって、多様な建造物に対応できるカスタマイズの幅が広がるだろう。例えば、細かく粉砕するほど強度は上がるため、高層ビルには細かい粒子の火山灰を高い比率で混合する。道路の防音壁なら、大きな粒子を混ぜる、という具合だ。
廃棄物である火山灰を有効活用できるのも、大きな利点だ。地元で調達できれば、遠隔地から原料を運送する必要もなくなる。ただし火山灰は地域別に異なる特性を持つため、セメントと混合したときの特性の違いも研究する必要があるだろう。
MITのオーラル・ビュユコズルトュルク教授(環境工学)は、火山灰混合コンクリートが都市の省エネを劇的に促進すると信じている。「素材レベルから建物レベル、さらに都市レベルに広げれば、途方もない省エネが実現できるかもしれない」
[2018.10.16号掲載]
シドニー・ペレイラ
この記事に関連するニュース
-
なぜ道路は“黒い”アスファルト? 白っぽい「コンクリート道路」もたま~に見るけど…どう使い分けているのか
乗りものニュース / 2024年7月13日 16時42分
-
南海電鉄とOPTMASSはグリーンナノテクノロジーを用いた脱炭素社会の実現に向け共に進んでいくことに合意しました
PR TIMES / 2024年7月12日 17時40分
-
気候変動対策に取り組む南フロリダ気候対応テックハブ、米商務省の助成金獲得(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月5日 0時30分
-
ソフトバンクなど、全固体電池の高密度化の技術開発に成功
マイナビニュース / 2024年7月3日 18時5分
-
田浦良文・太平洋セメント社長「カーボンニュートラル対応としては混合セメントの普及を。そして、セメント需要が見込める海外市場を開拓していきたい」
財界オンライン / 2024年6月27日 15時0分
ランキング
-
1韓国でLINEユーザーが急増した理由 日本への反発?
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月17日 15時55分
-
2ウクライナ侵略開始後、動員や弾圧避けるためロシアから65万人流出か…露独立系メディア集計
読売新聞 / 2024年7月17日 18時23分
-
3米副大統領候補のバンス氏、台湾へのパトリオット供与遅れを批判「ウクライナのせい」
産経ニュース / 2024年7月17日 14時38分
-
4血まみれで逃げる患者…「一線超えた」ウクライナの小児病院医師、露のミサイル攻撃を非難
産経ニュース / 2024年7月17日 15時32分
-
5トランプが銃撃を語る電話音声が流出「バイデンは親切だった」「世界最大の蚊かと思ったら弾丸」
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月17日 18時23分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください