ウイグル弾圧の「刑務所国家」中国で大儲けする監視カメラメーカー
ニューズウィーク日本版 / 2018年10月25日 19時10分
ドイツに拠点を置く亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」のピーター・アーウィンによれば、監視と収容施設は密接な関係があるという。「顔認識ソフトウエアと監視カメラのデータがデータベースに集約され、その情報に基づいてウイグル人が逮捕されたり、収容されたりしている」
ハイクビジョンの株式の42%を保有するのは、国有企業の中国電子科技集団(CETC)だ。ブルームバーグの報道によるとCETC自身も、特定の人が特定の地区を離れると、自動的に当局に通報が行く顔認識システムを開発中だという。
外国人投資家からの熱い視線
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、CETCの100%子会社「新疆聯海創智」は、新疆の治安当局が構築中の「統合共同作戦プラットフォーム(IJOP)」のサプライヤーに名を連ねている。IJOPは、監視カメラや銀行の取引記録などから集めた個人情報を統合。行政機関の間で共有し、「再教育キャンプ」に送り込むべき要注意人物を特定する包括的な監視システムだ。
IJOPをはじめとする中国政府の「テロリスト予測プロジェクト」によって、今やウイグル族は宗教的な慣習を実践しただけで取り締まりの対象になる恐れがある。新疆では17年、顔全体を覆うベールを着用したり、あごひげを伸ばしたりすること(どちらも敬虔なイスラム教徒である証拠だ)を禁止する条例も施行された。
一見したところ、ハイクビジョンはCETCと距離を置いている。しかし16年の社債目論見書では、ハイクビジョンはCETCの14年の利益の40%以上をもたらした、「CETCで一番の高収益企業」だと誇らしげに書いている。さらにCETCは「わが社の事業活動と、重要な事項について大きな影響を持つ」と認めている。
しかもハイクビジョンは自社技術を、治安当局が民族に基づき取り調べを行うためのツールとして売り込んできた。最近の宣伝用映像では、特定の人物が少数民族かどうかを自動判定する新しい顔認識ソフトを紹介している。HRWの上級中国研究者マイヤ・ワングによると、ハイクビジョンはパソコンやスマートフォンの固有アドレスを集める装置など、監視カメラ以外のIJOP向け機器も供給している。
ハイクビジョンとダーファは新疆だけでなく、国外でも高い関心を集めている。それもセキュリティー業界だけでなく、金融業界からだ。16年12月に香港と深圳の証券取引所が株式の相互取引を開始して以来、ハイクビジョンの株価は55%、ダーファの株価は約70%上昇した。「外国人は(ハイクビジョン株を)いくら買っても買い足りない」と、ブルームバーグは報じた。
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