トランプ当選を予言した2人の監督が語る、アメリカのカオスと民主主義
ニューズウィーク日本版 / 2018年10月31日 16時30分
――マイケル、民主党のために十分に戦わなかったバラク・オバマ前大統領にも敗戦の責任があると言う人もいる。
<ムーア>オバマを悪く言うつもりはない。私はオバマが大好きなんだ。ケネディ時代やアイゼンハワー時代を生きてきた人にとってさえ、生涯でオバマが最も優れた大統領であることは疑う余地はない。在任中の8年間、われわれ(リベラル)はオバマ批判をしたくなかった。彼の味方になる必要があった。
つまり政権交代の時点で、アメリカのリベラル階層は現状に満足していて自由放任主義だった。そもそもヒラリーは、得票数ではトランプを300万票近く上回っていた。ロシアはアメリカにさまざまなこと(選挙介入)を仕掛け、アメリカの民主的プロセスを損なうために多大なエネルギーを投じたが、アメリカ人の大部分をトランプ支持に変えることはできなかった。
合衆国憲法の中にも奴隷制の残滓はあるし、トランプ勝利の唯一の理由は選挙人制度だ。私たちは臆病者みたいに行動しているが、そういう生き方にはもううんざりだ。映画が人々の心に火を付けてくれることを願う。
――ジム、あなたの兄はオバマ政権で気候変動担当特使を務めており、あなたはオバマと家族を通したつながりがある。オバマの責任についてどう考えるか。
<スターン>どのみちクリントンが勝つと思っていたのだろうし、もしロシアによる介入への懸念を表明していたら、共和党から選挙介入だと非難されただろう。だが結局のところ、ロシアの介入は本当にあった。オバマは大統領という立場を利用してその脅威について国民に訴えることができたはずだし、そうしていれば選挙結果をひっくり返せていたはずだ。
――トランプは政治のあるがままの姿を白日の下にさらしただけだという見方も広がっている。
<ムーア>もしわれわれが現状を生き延びることができれば、変な話だが、トランプがアメリカの政治文化の仮面を剝いだことに感謝することになるだろう。人々の心に火を付けて行動に駆り立てたのも彼のおかげということになる。
――映画には武装した怒れる右翼が幾度か登場する。あなたは内戦を恐れているのか。
<ムーア>誰もが恐れていると思う。トランプが負けなかったことで、無意識のうちにホッと胸をなで下ろしたリベラルはたくさんいたと思う。アメリカの銃の半分を所有している人口の3%の人々と対峙する必要がなくなったからだ。
――ニューヨークで『華氏119』の試写会が行われた日、(トランプ選対本部長だった)ポール・マナフォートは有罪となり、(トランプの元顧問弁護士)マイケル・コーエンは検察に寝返った。トランプに司直の手が及ぶ可能性はあると思うか。
<ムーア>法廷での勝利なんてものがトランプ排除につながるなどつゆほども考えてはならない。(特別検察官のロバート・)ムラーはトランプを訴追できない。
とにかく11月の中間選挙に注力しなければならない。映画でも指摘したが、アメリカはリベラルな国だ。共和党(の大統領候補)が得票数で勝利したのは過去30年間で1度だけだ。
<本誌2018年10月30日号掲載>
[2018.10.30号掲載]
ニーナ・バーリー
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