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安田純平氏シリア拘束のもう一つの救出劇「ウイグルチャンネル」

ニューズウィーク日本版 / 2018年11月8日 17時0分

手紙には詳細な家族の名、妻と一緒に行ったレストランの名、帰国への希望を持っていると家族を思いやる言葉があり、脅迫されたような文言は一切なかった。

ロシアによる空爆以降イドリブは壊滅的打撃を受け、武装組織が外国人人質をその地に置き続けるのが負担となり、何とか解決をしようとしているようだと、トルコ在住のウイグル人は見立てていた。さらに、中国新疆ウイグル自治区で強制収容所が大量に造られ、大勢のウイグル人が収監されるようになったこの時期、ヌスラ戦線が解体した後のトルキスタン・イスラム党内のウイグル人上層部の中に「罪なき日本人を拘束し続けてよいのか」という強い声があったとも聞いている。



10月23日深夜に安田氏解放のニュースを聞いてから、私は2日ほど寝込んだ。直接会ったことのない安田氏と帰国後、SNS上で対話をしたが、拘束者への憎悪の気持ちを語る言葉に、私は悲しみを抱いた。

安田氏は11月2日の記者会見でも、拘束者たちに過酷な扱いをされたことを強調した。その中に含まれるウイグル人組織も、もちろん一枚岩ではない。組織の中にもおそらくさまざまな意見はあっただろう。だが、解放までに尽力してくれたウイグル人がいたことは事実である。

この問題を担当する外務省邦人テロ対策室には実は実質的な決定権はない。他国には存在するインテリジェンス機関も日本には存在しない。だからと言って、人の生死に関わることを「民間ボランティア」にさせるのはあまりに酷だ。

この件に関わったことについて、私は今でもそれがよかったのか、心が揺れている。

<本誌2018年11月13日号掲載>



※11月13日号(11月6日売り)は「戦争リスクで読む国際情勢 世界7大火薬庫」特集。サラエボの銃弾、真珠湾のゼロ戦――世界戦争はいつも突然訪れる。「次の震源地」から読む、日本人が知るべき国際情勢の深層とは。


水谷尚子(中国現代史研究者)


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