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ベルギー王室、ダブル不倫と隠し子認知問題に揺れる

ニューズウィーク日本版 / 2018年11月9日 18時0分

たしかに、先王に庶子がいたことが判明したら、金銭、家族、儀礼その他の結果に対処しなければならなかったであろう。 しかし、娘と国王があらゆる法的手段を使って対立するよりもずっと穏やかで、双方に損害が少なかったのではないか?



そうすれば、ただでさえ破壊的で重たいこの究極の家族紛争がカメラに曝されることもなかっただろう。 アイデンティティや父を求めることを誰が連続ドラマにしたいと思うだろうか? 「誰もいない、夫婦生活が暴きたてられることに慣れている王家の人でさえも」

そして、まだ時間があった時に、秘密裡に和解で「デルフィーヌ事件」を収拾すべきであったという。

フランドルとワロニーの対立のために、もし国王がいなければ国はとっくに分裂していただろうといわれる。国王は、ベルギーを一つの国家として繋ぎとめ、文字通り「国民統合のシンボル」になっている。そもそもベルギーは、カトリックのワロンにカトリック教徒のオランダ人がプロテスタントのオランダから分かれて合体したものだ。国王にはカトリック教徒としての徳が要求される。

しかし、この事件について、そのような(前)国王としての資質についての批判、ましてや君主政の賛否についての議論はまったくあがっていない。たまたま王族に生まれた人間としての私的な出来事と国家を支える制度・職能としての国王とを混同せず、過剰な倫理観を押し付けることもなく、ベルギー国民は「大人の対応」をしている。

[執筆者]
広岡裕児
1954年、川崎市生まれ。大阪外国語大学フランス語科卒。パリ第三大学(ソルボンヌ・ヌーベル)留学後、フランス在住。フリージャーナリストおよびシンクタンクの一員として、パリ郊外の自治体プロジェクトをはじめ、さまざまな業務・研究報告・通訳・翻訳に携わる。代表作に『EU騒乱―テロと右傾化の次に来るもの』(新潮選書)、『エコノミストには絶対分からないEU危機』(文藝春秋社)、『皇族』(中央公論新社)他。

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広岡裕児(在仏ジャーナリスト)


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