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加入者が1日100万人?──アリババ会員向け重大疾病保障とは?

ニューズウィーク日本版 / 2018年11月12日 19時0分

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1 信美人寿については、拙著「IT×保険で、相互保険を再定義−中国初の生保相互会社の誕生」(中国保険市場の最新動向(30)、2018年2月20日発行)をご参照ください。
2 例えば、配車アプリ(DiDi)の利用、店舗でのショッピングにおいて、アリペイで10元以上決済した場合は1点獲得(1ヶ月の上限は700点まで)。美団などデリバリーサービスの利用時に、アリペイで20元以上決済した場合は1点を獲得。



一方、ゴマスコアは、アリババ経済圏において、ユーザーの消費行動を偏差値化したものである。内容としては、(1)経歴や家族構成を中心とした本人の特性、(2)ネット上の金融取引、(3)SNSなどのコネクション、(4)ネット決済状況、(5)資産・経済力などを総合的に評価し、ユーザーを350点から950点の信用偏差値で表わしたものである。アリババ経済圏において、一定程度の信用力があると判断されるのは650点が基準となっているものが多い。点数は自身で確認することができ、高偏差値のユーザーのみが参加できるイベントや特典がある。また、650点以上を基準に、アリババが提携している病院において、1,000元を限度にキャッシュレスでの通院治療が可能となるなど、社会保障や保険分野でのサービス提供が近年進んでいる。

このように、重大疾病保障への加入に際しては、アリ会員、ゴマスコアなど、グループが独自に蓄積したコンテンツをフル活用することで、モラルリスクを一定程度担保している。

3──給付の多寡に応じて保障コストは後払い、年齢・性別にかかわらず同額を拠出

保険料に相当する保障コストについては、以下のような仕組みとなっている(図表1)。

被保険者に相当する給付対象者が、給付対象となる疾病のいずれかに罹患し、診断が確定した後、その内容について審査がされる。審査を通過した事案は、毎月7日、21日に、加入者に公開される。事案の内容に異議がない場合は、給付金額に受給者数を掛けた金額と、管理費(給付金総額の10%)を加えた総額を、年齢や性別にかかわらず加入者全員で除して、等しく負担する。算出された保障コストは、毎月14日、28日にアリペイから引き落とされる。





アリペイによれば、例えば500万人が加入したとして、重大疾病の診断を受けた患者が1回の公示で100名となった場合、最も多くて30万元×100名で3,000万元の給付金と、3000万元×10%で300万元の管理費を合計し、3,300万元となる。これを500万人で除した場合、1期・1人あたりの保障コストは、最も多くて6.6元となる。アリペイ側は、毎期の保障コストは多くても10元以下と推算している。なお、事案1件あたりの支払額が0.1元を超える場合、信美人寿がその分を補填することになっている。
 
保障コスト(保険料負担)といった面から考えると、一般的な重大疾病保険に加入する場合、年齢や保障内容によるが、年間保険料は200~2,000元ほどが必要となる3。中国では公的医療保険制度は整備されつつあるが、高額な治療費が必要となった場合の自己負担は重くなっている。悪性腫瘍などの重大疾病の治療には50~60万元が必要とされており、疾病に罹患した患者のうち、およそ42%は家計が貧困に陥っているという発表もある4。また、中国保険業協会によると、重大疾病への備えが必要とは思いつつ、保険に加入していない人は82.1%、47.8%が何らかの医療保険に加入する必要があると思っているものの、実際に加入できているのはわずか6.7%に留まっている。今般の重大疾病保障のように、保障コストが年間で100~200元に抑えられれば、加入に際してのハードルは低くなる。加えて、運営において、発生した事案が公開されること、管理費を明示していることなどから、透明性の高い医療保障として信頼を獲得し、短期間で加入者数が急増したと考えられる。

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