BTSはなぜ「原爆Tシャツ」を着たのか?原爆投下降伏論のウソ
ニューズウィーク日本版 / 2018年11月15日 13時0分
「原爆によって日本が降伏した」という歴史観は、冒頭に戻るように、何としてでも原爆投下を正当化したいアメリカが創ったプロパガンダである。
そして、歴史に「if」は無いが、仮に想像すれば、「原爆投下は行われているが、ソ連対日参戦が無かった場合」、日本はそのままずるずると降伏の決断を先延ばしし、本土決戦に突入していただろう。その場合、戦後日本の復興は無い。
また、「原爆投下は無いが、ソ連対日参戦が史実通り行われていた場合」、日本はやはりポツダム宣言を受諾して無条件降伏していた。つまりどちらの想像「if」に転んでも、「原爆投下は必要が無かった」という結論に到達するのである。これを回避したいが為に、「原爆によって日本が降伏した」という歴史観が「後から」創作されたのだ。
今回のBTSの原爆Tシャツ問題は、「原爆によって日本が降伏した=植民地解放」という歴史認識を背景にしたもので、必ずしも史実に基づいた正しい歴史認識とは言えない。朝鮮の解放は、皮肉なことにその後、朝鮮半島を分断する"主犯"のひとつ、ソビエトの対日参戦によってもたらされたのだ。
単に口角泡を飛ばしてBTSを批判するだけではなく、もう一度、これらの事実を総合して、「原爆投下と日本降伏」の関係性を考えて頂ける端緒になれば、本稿の使命は全うされると筆者は思う。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]
古谷経衡(ふるやつねひら)文筆家。1982年北海道生まれ。立命館大文学部卒。日本ペンクラブ正会員、NPO法人江東映像文化振興事業団理事長。著書に「日本を蝕む『極論』の正体」 (新潮新書)の他、「草食系のための対米自立論」(小学館)、「ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったのか」(コアマガジン)、「左翼も右翼もウソばかり」(新潮社)、「ネット右翼の終わり」(晶文社)、「戦後イデオロギーは日本人を幸せにしたか」(イーストプレス)など多数。最新刊に初の長編小説「愛国奴」、「女政治家の通信簿 (小学館新書) 」
古谷経衡(文筆家)
この記事に関連するニュース
-
「憎むべきは戦争」 被爆後、米国に敵意を抱いていた女性の思い
毎日新聞 / 2024年7月13日 15時47分
-
科学の力で解き明かせるか 79年前に落とされた模擬原爆の謎
毎日新聞 / 2024年7月12日 13時0分
-
戦後、日本が「分断国家」にならずに済んだ深い事情 「米軍による占領」と引き換えにソ連が得たもの
東洋経済オンライン / 2024年7月2日 20時0分
-
【特集】「私たちは、同じ人間なのだから」 原爆の憎しみを乗り越えて伝えるメッセージ
広島テレビ ニュース / 2024年6月27日 7時0分
-
なぜ広島・長崎に「人類史上最悪の兵器」が落とされたのか…「降伏しない日本が悪い」というアメリカの詭弁
プレジデントオンライン / 2024年6月21日 9時15分
ランキング
-
1米副大統領候補のバンス氏、台湾へのパトリオット供与遅れを批判「ウクライナのせい」
産経ニュース / 2024年7月17日 14時38分
-
2トランプ氏は「神の手に守られた救世主」 暗殺未遂、個人崇拝に拍車
AFPBB News / 2024年7月17日 16時29分
-
3韓国でLINEユーザーが急増した理由 日本への反発?
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月17日 15時55分
-
4「将軍」最多25ノミネート=主演の真田広之さん候補―米エミー賞
時事通信 / 2024年7月18日 4時53分
-
5ウクライナ侵略開始後、動員や弾圧避けるためロシアから65万人流出か…露独立系メディア集計
読売新聞 / 2024年7月17日 18時23分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)