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ロヒンギャを迫害する仏教徒側の論理

ニューズウィーク日本版 / 2018年11月20日 14時45分

その一方で、マバタは信者に貧困の原因と解決方法を明示してくれる。原因とはイスラム教徒であり、彼らを排斥することが貧困から抜け出す道なのだと。

そして、こうしたマバタの活動を支える潤沢な資金の源は、大勢の在家者によるお布施以外に軍部にもある。

ロイター通信によれば、ウィラトゥは軍部出身の元宗教相サンシンに重用されてマバタの勢力を拡大した。また、ミャンマー紙イラワジは、ウィラトゥと国軍司令官ミンアウンフラインとの間に太いパイプがあると報じている。ミンアウンフラインは、17年8月25日にラカイン州で起きたロヒンギャ掃討作戦の首謀者として、国連に告発されている人物だ。

さらに、掃討作戦が起きたロヒンギャの居住地の近くには、中国の投資金融グループ「中国中信集団(CITIC)」が港や経済特区を建設しようとしている。ミャンマー政府は17年9月、掃討作戦で空いたロヒンギャたちの居住地を「再開発」する目的で管理すると発表した。

ミャンマーの宗教対立の原因を「民衆を扇動する過激な仏教僧」と「少数民族を弾圧する無慈悲な多数派」のせいにすることは簡単だ。だが、マバタやウィラトゥもこの搾取構造の駒の1つにすぎないのではないか。

無垢な市民の妄信によって反イスラム運動は拡大し、ロヒンギャ危機は臨界点に達した。解決には、マバタやラカイン人といった表舞台の人間だけでなく、水面下で暗躍する「悪」を追及する必要がある。そしてマバタの僧侶や市民もまた、自らに問いただすべきではないだろうか。自分の頭で考えることを放棄し、悪の甘言を信じ続けた罪はどれほどの重さなのかと。

<本誌2018年11月20日号掲載>



※11月20日号(11月13日売り)は「ここまで来た AI医療」特集。長い待ち時間や誤診、莫大なコストといった、病院や診療に付きまとう問題を飛躍的に解消する「切り札」として人工知能に注目が集まっている。患者を救い、医療費は激減。医療の未来はもうここまで来ている。

今泉千尋(ジャーナリスト)


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