アマゾン第2本社が示す、アメリカ「繁栄の分断」
ニューズウィーク日本版 / 2018年11月24日 15時0分
ニューリッチ層にサービスを提供する人たちも増えている。弁護士や資産管理人、経営コンサルタント、料理人、ピラティスのインストラクターなどだ。
ブルッキングズ研究所によれば、10~17年に雇用の伸びの半数が見られたのは20の大都市圏で、現在はこれらの地域に人口の3分の1が集中している。
一方、内陸部は高齢化が進み、教養度が低下し、より貧しくなっている。ドナルド・トランプ大統領は政治の「分裂」を利用していると言われるが、経済的・文化的な分裂と言ったほうが分かりやすいかもしれない。未来のテクノロジーで繁栄する巨大都市群と、取り残された人々が暮らす過疎地帯の風景だ。
民主主義もゆがんできた。上院議員の定数は人口に関係なく各州2議席なので、人口約3950万人のカリフォルニア州と約58万人のワイオミング州の1票の差は驚くほど大きい。
もっともサンフランシスコやワシントンには急速に進む再開発と縁のない人々も多く暮らしており、その数は増えている。高層ビルやおしゃれなレストランの谷間に身を潜めるホームレス――階級格差を風刺したディケンズの小説の舞台さながらだ。
アメリカで中流層が姿を消しつつあるなか、取り残された2つのグループは、田舎に住む学歴のない白人のトランプ支持者と、都市部の貧しい人々だ。
この問題に取り組むのはアマゾンではない。アマゾン以外の私たち一人一人が向き合うべきものだ。
<本誌2018年11月27日号掲載>
※11月27日号(11月20日発売)は「東京五輪を襲う中国ダークウェブ」特集。無防備な日本を狙う中国のサイバー攻撃が、ネットの奥深くで既に始まっている。彼らの「五輪ハッキング計画」の狙いから、中国政府のサイバー戦術の変化、ロシアのサイバー犯罪ビジネスまで、日本に忍び寄る危機をレポート。
ロバート・ライシュ(元米労働長官、カリフォルニア大学バークレー校教授)
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