米中間の火花に隠された大人の事情
ニューズウィーク日本版 / 2018年12月4日 16時40分
トランプと習が敵対的な態度を崩さないのには、国内的な理由もある。トランプが中国の脅威を強調することは、支持層を喜ばせると同時に「中道派」や浮動票にアピールするのにも役立つだろう。一方で中国国内では、改革の遅れや経済成長に失速が見込まれていることで、習政権に対する不満が募っている。習がアメリカに強硬な姿勢を取りたくなるのはうなずける。
どちらも引かない状況下で、両国は2つの危険に迫られている。1つは、双方の計算違いによって危険な衝突が勃発する可能性が高まっていること。2国間関係において優位に立ち、面目がつぶれる結果を避けようと必死になれば、台湾や南シナ海など特に問題の多い地域で致命的なもくろみ違いを招く。
2つ目に、敵対心が増大すれば、危機を迅速かつ効率的に解決しようとする努力が阻まれるかもしれない。双方の政権が、「敵」への強硬姿勢を国民の支持集めに利用できると考えてもおかしくない。
今のところは、危機が勃発する確率は高くはない。しかし両国間の緊張の原因がここまで根深いと、状況がすぐに好転するとは思えない。米中両政府は相違点になんとか対処しながら、軍事衝突の危険性を和らげる道を探すことに注力するべきだ。
米中閣僚級会談のように2国間のコミュニケーションを強化することも1つの手だ。そうすることでリスクを減らすというのは、2つの大国にとって最も控えめな目標かもしれない。しかし、世界がますます不安定化するこの時代に米中関係を安定させるためには、達成しなければならない目標でもある。
<本誌2018年12月4日号掲載>
※12月4日号(11月27日発売)は「インターネットを超えるブロックチェーン」特集。ビットコインを生んだブロックチェーン技術は、仮想通貨だけにとどまるものではない。大企業や各国政府も採用を始め、データ記録方法の大革命が始まっているが、一体どんな影響を世界にもたらすのか。革新的技術の「これまで」と「これから」に迫った。
ティモシー・ヒース(米ランド研究所国防問題担当上級研究員)
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