コスタリカが再生可能エネルギーだけで300日を記録
ニューズウィーク日本版 / 2018年12月10日 16時30分
<ただしエネルギー消費の70%は自動車や家庭向けの石油製品>
中米のコスタリカは、利害対立のためになかなか温暖化対策を進められない欧米諸国をしり目に、再生可能エネルギーの記録を更新した。
英紙インディペンデントによれば、コスタリカは国内で使用する電力を300日間、再生エネルギーのみで賄い、2015年に自らが達成した299日の記録を破った。
コスタリカは、総発電量の約99%を5種類の再生可能エネルギーで生産している。
最大の供給源は水力発電で、再生可能エネルギーの78%を占める。残りは風力と地熱が各10%、バイオマス(生物資源)と太陽光が各1%という構成だ。再生可能エネルギーの活用によって、将来的に石炭や天然ガスなどの化石燃料への依存をなくせる可能性がある。
ただしそこには落とし穴がある。数字は電力に限ったもので、自動車や家庭用の化石燃料は調査に入っていない。再生可能エネルギーを推進するコスタリカの民間団体の活動家、モニカ・アヤラは300日間という記録について「素晴らしい」としながらもこう注意を促した。
「この数字は、コスタリカで消費するエネルギーの70%近くが石油だという弱点を隠している」
米仏は温暖化対策で混乱
欧米先進国はより大きな壁に突き当たっている。
アメリカは石油と天然ガスへの依存度が高い。インディペンデント紙によれば、これら2種類の化石燃料がエネルギー全体の3分の2を占める。2016年に再生可能エネルギーが占めた割合は15%、2017年には18%へと上昇した。
アメリカには再生可能エネルギー事業に政府が援助する制度があるが、シェール革命で石油が安くなったために取り組みは進んでいない。ドナルド・トランプ米大統領は2017年7月、参加195カ国に地球温暖化対策を義務付けた「パリ協定」からの離脱を表明した。
トランプ政権下の米環境保護庁(EPA)が、2015年にバラク・オバマ前米政権が導入した水質保護規制を撤回する気配もある。米政治専門メディア「ザ・ヒル」によれば、大切な河川や湿地などの水源を連邦政府の管理下に置くこの規制が撤回されれば、発電所の排水などから守られてきた水域が保護対象から外れる恐れがある。
またフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、電気自動車への移行促進のため化石燃料にかかる燃料税を価格の60%まで引き上げようとしたが、「黄色いベスト」を着た労働者によるデモに発展。仏政府は2019年中の燃料税の増税を見送った。
(翻訳:河原里香)
ケリー・ウィン
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