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習近平の狙いは月面軍事基地──世界で初めて月の裏側

ニューズウィーク日本版 / 2018年12月11日 14時0分



それを政府として後押ししたのが、米大統領だったバラク・オバマ氏だ。2015年11月25日に「2015宇宙法」を成立させたのである。
 
なんと、宇宙条約で禁止されている「国家による領有権を主張することはできない」の裏をかいて、「個人あるいは企業による所有は許される」という趣旨の内容を「宇宙法」に盛り込んでしまったのだ。
 
こんなことをしてしまったら、月の領有権も資源採取も、「個人や企業なら許される」ということになってしまうではないか。しかしアメリカは、こうしておいて、民間の宇宙開発を促進させた。月協定に関しては、主要国はどこも加盟していないので死文化しているものとして無視した。
 
天体の領有権や資源を、個人なら所有してもいいとなったら、何が起きるのか?
 
2018年9月6日、中国共産党の機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は、「中国製造2025」の中で提唱されている民間ロケットに関して、国家の発射場である酒泉衛星発射センターから、中国で最初の民間用探査ロケットが9月5日に打ち上げられたと伝えた。 
 
打ち上げたのは中国民間商用ロケット企業の北京星際栄耀空間科技有限公司で、ロケットは「SQX-1Z」という固体燃料準軌道宇宙探査ロケットだ。
 
その裏には何があるのか?
 
実は習近平国家主席は「中国製造2025」を発表した2015年5月に、同時に「2015国防白書《中国の軍事戦略》」を発表している。中国語で9000文字、10ページほどの短いものなので、日本のメディアはほとんど「せせら笑って」無視しているが、そこには「軍民融合」に関する「中国の軍事戦略」が書いてある。
 
これはまさにオバマが署名して発効させたアメリカの「2015宇宙法」を意識してのものだった。
 
オバマの「2015宇宙法」同様、習近平の「2015国防白書《中国の軍事戦略》」もまた、民間(企業)が人工衛星を打ち上げて月面に着陸し「ビジネス用の基地を創る」ことを可能ならしめている白書だ。違うのは何かというと、習近平の場合は、その手段として「軍民融合」を提示していることである。
 
「中国製造2015」にも「軍民融合」という言葉があり、「2016中国宇宙白書」にも「軍民融合」が書かれている。そして「2015国防白書《中国の軍事戦略》」には「軍民融合」が満ち溢れている。
 
注意しなければならないのは、アメリカの「2015宇宙法」と違って、中国はあくまでも「民間・企業による領有を可能にする」際の手段として「軍民融合」と、「軍」というカテゴリーが入っているということである。これによって、月面基地も「軍事基地」に容易に移行できることに、われわれは注目していなければならない。
 
米中ハイテク戦争は、宇宙でもすでに始まっているのである。

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