アフガン介入17年、終わりなき泥沼
ニューズウィーク日本版 / 2018年12月11日 18時20分
戦闘による犠牲者はバグラム空軍基地から母国アメリカに帰還する BRIAN DAVIDSON-U.S. AIR FORCE/GETTY IMAGES
だが、長く国防総省と国務省でアドバイザーを務めてきた戦略国際問題研究所のアンソニー・コーズマンによれば、誰も即時完全撤退を主張してはいないし、逆に軍事介入を強めるべきだと主張する者もいない。昨年、民間軍事会社のブラックウォーターが、数千人の傭兵で戦争に勝てるから55億ドルで請け負うと持ち掛けたが、大統領は応じなかった。
「大統領は当面、アフガニスタン問題を真剣に考える気がない」と、コーズマンは言う。「この先にはアフガニスタンでも選挙がある。和平交渉の可能性も残っているし、冬には敵の攻勢も弱まるからだ」
トランプは気まぐれで、慌てて結論を出しがちだ。今後の予測は難しいと専門家たちはみる。
「去年の増派の発表直前まで、トランプは頑固に撤退を主張していた」と、ある現役の情報部員は匿名を条件に言った。「百八十度の転換だった。今後の出方も予想は不可能だ」
たとえトランプが急に撤兵の命令を下しても、着任したばかりの新司令官オースティン・ミラー陸軍大将による報告書の作成を待つという理由で、軍の上層部は抵抗するかもしれない。
「いつもの手だ」と、この情報部員は言う。軍はそんな時間稼ぎで、撤退に傾いていたバラク・オバマ前大統領も牽制した。「こうして気が付くと、また1年が過ぎる」
情報筋によれば、8月に作成され、まだ未公開のアフガニスタンについての国家情報評価(NIE)は悲観的で、トランプが撤退を決める口実になり得るという。だが「長年、アフガニスタンのNIEはいつも悲観的だった」と、元国家情報長官のジェームズ・クラッパーは本誌に語っている。
しかしウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、今回のNIEの内容は特に暗い。ここ1年でタリバンは優位に立ち、ガニ大統領は不人気で、おまけに疫病が蔓延したと伝えている。
「衝撃的な報告だ」と、トランプ政権上層部と話し合ったある情報筋は言う。膠着状態の継続は「反政府派にとって勝利を意味する」からだ。
政府軍や警察(緑の制服)が米軍や多国籍軍(青い制服)を攻撃する「グリーン・オン・ブルー」攻撃も急増し、ミラー新司令官も危うく命を落とすところだった。これもトランプが撤退を急ぐ理由になる。
報告書を都合よく操作
NIEは情報機関が作成する極秘の報告書だが、国務省、国防総省、ホワイトハウスの影響を受ける。高官たちはあらかじめ考えた結論に導くべく、報告書を操作しがちだ。イラクに大量破壊兵器があると、ブッシュ政権に報告した例もある。
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