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「軟弱系」アイドル旋風に共産党は渋い顔?

ニューズウィーク日本版 / 2018年12月12日 14時40分

『流星花園』はアジアの女性をとりこにした。中国の女性も例外ではなかった。4人組が戯れるオープニングに始まり、大邸宅のバスタブで物思いにふける俳優のジェリー・イェンをなめ回すように映すシーンなど、若い女性の性的・情緒的欲求を強く意識した作品になっている。

アイドル産業で貿易黒字

00年代半ばになると、韓流ブームが到来する。09年には、同じく『花より男子』が原作の韓国ドラマ『コッポダナムジャ』(邦題『花より男子 ~ Boys Over Flowers』)が放送され、台湾版以上の大ヒットになった。

この時期、男性アイドルの美の基準が大きく変わり始めた。KポップやKドラマの男性たちは、メーキャップや時には美容整形により、いっそう外見に磨きを掛けるようになったのだ。

韓流ブームが中国本土に上陸した頃、中国では都市の中流層が増加し始めていた。そうした家庭に育った思春期の娘たちは、香港の往年の俳優アンディ・ラウやジェリー・イェンに夢中になった世代と違って、自由に使える小遣いを持っていた。こうして男性アイドル業界がビッグビジネスに発展するのに伴い、次々と新しいアイドルが登場するようになった。

Kポップブームが中国本土で一気に爆発したのは13年。それに火を付けたのは、前年にデビューした中韓混合グループ「EXO(エクソ)」だった。

EXO結成時の中国人メンバーであるウー・イーファンとルー・ハンの人気は絶大だった。ティーンエージャーの女の子たちは、うっとりした表情で2人の魅力を何時間も語り合ったものだ。2人はEXO脱退後も中国で一流企業のCM契約を次々と獲得するなど、トップアイドルの地位を築いている。

中国政府がこの状況に苦々しい思いをしているとしても、それを表には出していない。なにしろ小鮮肉たちのおかげで、中国は歴史上初めてアイドル産業で「貿易黒字」を計上できている。それに、小鮮肉をプロパガンダ映画に起用して、若い世代の国家への忠誠心を高めたいという思惑もある。



いずれにせよ、小鮮肉ブームの終焉が訪れる気配はない。今夏に放送が始まった中国本土版『流星花園』(舞台は上海)に登場する「F4」のメンバーは、絵に描いたような小鮮肉だ。9月にこの面々が『開学第一課』に出演し、「娘砲」批判が持ち上がるきっかけになった。

中国軍の未来は若い男性たちの肩にかかっているかもしれないが、中国が経済大国であり続ける上では若い女性たちの力がますます重要になっている。さすがの中国共産党も、女性たちの熱烈な支持を受ける小鮮肉を邪険にはできない。

<本誌2018年12月11日号掲載>



※12月11日号(12月4日発売)は「移民の歌」特集。日本はさらなる外国人労働者を受け入れるべきか? 受け入れ拡大をめぐって国会が紛糾するなか、日本の移民事情について取材を続け発信してきた望月優大氏がルポを寄稿。永住者、失踪者、労働者――今ここに確かに存在する「移民」たちのリアルを追った。


ローレン・テイシェイラ


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