マクロン主義は、それでも生き残る
ニューズウィーク日本版 / 2018年12月13日 17時20分
だが黄色いベスト運動の参加者の言葉が象徴するように、温暖化を懸念するエリートは「世界の終わりについては話し合う」が、庶民が話し合っているのは「月末のやり繰り」だ。
たとえマクロンが人間味を増したにせよ、その先には苦痛が待っている。燃料税は二酸化炭素消費量を減らす対策としては必要な苦痛を伴う措置だが、他国の指導者は導入を避けてきた。
マクロンは、多くの有権者が弱いEUを求めるなかで、強いEUを模索している。ナショナリズムが台頭するなかで、多国間主義を断固として支持し、反移民運動を認めようとしない。
だからこそ、マクロンの今後を気に掛ける必要がある。フランスの「主権」や国家の栄誉に対するマクロン流のこだわりによって、リベラルな普遍主義と保守的なナショナリズムのどちらでもない中道が示される可能性があるからだ。
マクロン自身、CNNのインタビューで、イノベーションと人的資本への投資と、フランスの主権へのこだわりこそが「ナショナリストに対抗する最良の答え」になると語っている。
マクロンは主要国指導者の中で唯一、勇気ある政策を実行しようとしている。彼にとって自分自身が最大の敵となる可能性もあるが、私たちにできることは、マクロンの実験を注視し、最善を祈ることだけだ。
From Foreign Policy Magazine
<本誌2018年12月18日号掲載>
※12月18日号(12月11日発売)は「間違いだらけのAI論」特集。AI信奉者が陥るソロー・パラドックスの罠とは何か。私たちは過大評価と盲信で人工知能の「爆発点」を見失っていないか。「期待」と「現実」の間にミスマッチはないか。来るべきAI格差社会を生き残るための知恵をレポートする。
ジェームズ・トラウブ(ジャーナリスト)
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