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女性たちをとりこにする波瀾万丈の歴史ファンタジー

ニューズウィーク日本版 / 2018年12月19日 18時0分

原作が女性読者の絶大な支持を得ているから、ドラマのヒットも確実だった。それでも製作総指揮のマシュー・ロバーツはシリーズ1の反響に驚いたと言う。放送開始前にロサンゼルスで開催した最初のイベントでは、2500席の会場にファンがあふれた。「まだ1回も放送していないのに、ロックコンサート並みに盛り上がった」

『アウトランダー』はスターズ最大のヒット作の1つで、既にシーズン5、6の放送も決まっている。原作が歴史ファンタジーとあって、HBOの人気ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に例える向きもあるが、違いはドラマが原作に先行する心配がないこと。「4部も先に行っているから、追い越されっこない」と、原作者のガバルドンは言う。原作は第8部まで刊行されており、第10部で完結する予定だ(邦訳は第7部まで刊行されている)。



ニューヨークのコミコンに集まった大勢の『アウトランダー』ファン Michael Kovac/GETTY IMAGES

ファン同士の交流も楽しみ

「1作目は小説作法の練習のつもりで書いた」と、ガバルドンは言う。91年に1作目が刊行された当時、彼女はアリゾナ州立大学環境研究センターの助教だった。

英語版の刷り部数はシリーズ合計で2500万部に迫る勢い。ドラマの放送が始まって原作の人気にさらに火が付いた。第9部は来年刊行される予定だが、印税の前払いは600万ドル超といわれている。

「最年少では10歳の男の子がファンレターをくれた」と、ガバルドン。「最年長は86歳の女性。でも大多数は30歳以上で、マナーを心得た大人。教育レベルが高い良識ある人たちよ」

そんな礼儀正しいファンも、ヒューアンがコミコンのステージに登場するとわれを忘れて黄色い声を上げた。ヒューアンはマッチョな長身で、古風な二枚目のマスク。イギリスのブックメーカーは次の007役の有力候補と騒いでいる。その予想が当たれば、スコットランド出身の俳優がジェームズ・ボンドを演じるのは初代のショーン・コネリー以来となる。

本人はこれほど騒がれるとは夢にも思わなかったと言う。謙虚な人柄も好感度アップにつながっているようだ。「原作が大ベストセラーだなんて知らなかったから最初は面食らった。でも素晴らしい経験だ」

ドラマの舞台もブームの恩恵を受けている。ハイランド地方の荒涼とした風景に魅せられたファンが続々と「聖地巡礼」に訪れているのだ。昨年スコットランドを訪れた外国人観光客は史上最高の320万人。まさに「アウトランダー効果」だと、スコットランド観光局のマルコム・ラフヘッドは満足げだ。

アン・ゴール(52)はまだスコットランドには行っていないが、地元のピッツバーグでファンイベントを催している。彼女の宝物は、シーズン1でジェイミーがクレアに贈った結婚指輪のレプリカだ。

だがこのドラマから得た最高の贈り物は世界中のファンとの交流だと話す。「『アウトランダー』の話で盛り上がって、すぐに打ち解けられる。今では世界中に素晴らしい仲間がいる」

<本誌2018年12月04日号掲載>




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アンナ・メンタ


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