危険度を増す米中関係
ニューズウィーク日本版 / 2018年12月21日 16時30分
<トランプ政権が中国への敵対心を露骨にするなか、このままでは米中関係がますます危険になると専門家は警告している>
米中関係はすでに「危険な段階」に突入しており、今後さらに「悪化する可能性が高い」と、米ハーバード大教授が語った。
「米中関係に関する新たな概念が必要だ。アメリカの古い見方でいう『中国との戦略的パートナーシップ』はすでに崩壊したからだ」と、ハーバード大学ケネディ行政大学院の外交専門家グラハム・アリソンは香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストの12月20日付の記事で語った。「今は危険な段階だ。もっと想像力を働かせないと、さらに危険になる可能性が高い」
ちょうど同じ日、アメリカと同盟3カ国(イギリス、オーストラリア、ニュージーランド)は、中国がサイバー攻撃を仕掛けて米企業の知的財産を盗んでいると強く非難した。ドナルド・トランプ米政権は、中国はサイバースパイ行為を阻止する2015年の協定を破ったと批判した。
長引く貿易戦争
米中の対立が深まっているのは、貿易戦争のせいでもある。7月以降の追加関税の応酬で、その総額は数千億ドルにのぼっている。12月1日、トランプはアルゼンチンで中国の習近平国家主席と会談し、中国が譲歩案を出すことを条件に対中追加関税の発動を猶予。米中貿易戦争は一時休戦に入っているが、猶予期間は90日間だけだ。
会談と同じ日、カナダ当局は中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ・)副会長兼CFO(最高財務責任者)の孟晩舟(モン・ワンチョウ)をバンクーバーで逮捕した。ファーウェイは中国を代表するグローバル・ハイテク企業。スマホの世界出荷台数では今年、アップルを抜き2位に浮上した。孟の容疑は対イラン制裁に違反して製品を違法に輸出したことで、アメリカが身柄の引き渡しを求めている。
孟は保釈金1000万カナダドルを払って保釈されたが、バンクーバーの自宅で24時間監視されている。中国は、カナダとアメリカが政治目的で彼女の「人権」を侵害していると非難、即時解放を要求している。
「アメリカは中国を戦略的パートナーとはみず、戦略的ライバルとみている」と、アリソンは指摘した。「中国にとっては難題だ。関係者は今後どうすべきあれこれ考えているが、まだ具体的な解決策は見つかっていない」
マイク・ペンス米副大統領は11月17日、たとえそれが「新冷戦」を意味することになろうとトランプ政権は貿易摩擦で中国側に一切譲歩しない、と明言した。10月4日に保守系シンクタンク、ハドソン研究所で演説した際も、米情報機関のある高官が「中国がアメリカでやっていることに比べればロシアなど大したことはない、と言ってきた」と述べた。
米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官は、7月に米コロラド州で開かれたアスペン安全保障フォーラムでの講演で、FBIは中国をアメリカが直面する最大の脅威だとし、中国が関与した経済スパイ事件を全米50州で捜査中だと語った。
たとえ緊張関係にあっても米中両国が歩み寄り、「共同で」新たな関係を構築する必要がある、とアリソンは言った。「ライバル同士で新しい形の力関係を築くことは可能だ」
(翻訳:河原里香)
ジェイソン・レモン
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