トランプは石炭の雇用を取り戻せない──嘘に気づき始めた労働者たち
ニューズウィーク日本版 / 2019年1月9日 17時30分
<トランプは我々の票が欲しいだけで嘘をついている、と元炭鉱労働者は言う>
アメリカの2人の元炭鉱労働者がCNNの取材に答え、石炭産業を復活させると公約したドナルド・トランプ米大統領の力量に疑問を呈した。
元炭鉱労働者で現在は石炭コンサルタントを務めるアート・サリバンは、「大統領は(炭鉱労働者の)票が欲しいだけで、真実を語っていない。嘘をついている」と述べた。
「炭鉱労働者はとても善良な人々だ。私はこれまでの人生を彼らと共に過ごしてきた。真実を知れば、彼らも正しい判断をするだろう」
同じく元炭鉱労働者のブレア・ジマーマンも、トランプの主張に異を唱えた。
「石炭の専門家は私で、大統領ではない。大統領選の最中、私はトランプの選対スタッフに尋ねた。『いったいどうやって石炭産業を復活させるのか』と。やり方次第で復活は可能だ(石炭を燃料とする)火力発電所を再稼働すれば復活できる。だが規制緩和ではほとんど効果はない」
トランプは大統領選の最中に、石炭産業を復活させ、雇用を増やす能力が自分にはあると盛んに主張していた。しかしCNNの報道によれば、トランプ就任後に閉鎖された火力発電所の数は、オバマ前政権下での最初の4年間よりも多い。
8万人の雇用が5万人へ
大統領任期の折り返し点が近づく中、雇用の拡大は思ったように進んでいない。そこから、トランプには公約を実行する能力がないのではないか、という疑問の声が業界の重鎮からも上がり始めている。
ニュースサイト「アクシオス」に2018年11月に掲載された記事は、米国最大の石炭企業マレー・エナジーのロバート・マレーCEOの発言を伝えている。「(石炭産業再生が)実現するかどうかは政府次第だ」とマレーは述べた。「その政府は、いまだに調査をしている」
CNBCは2018年8月、労働統計局(BLS)のデータを引用しつつ、トランプ就任後、石炭関連の雇用が2000人ほど増加した、と報じた。だがこの数字は推計に基づくもので、これだけの雇用が実際に創出されたかどうかは政府にも明言できないという。
過去10年間で、石炭産業に従事する労働者の数は激減している。労働統計局のデータを見ると、2008年10月の時点で、石炭産業で働く労働者の数は8万4800人だった。これに対して、最終的な統計値が入手可能な最新の月である2018年10月の段階で、この数字は5万2900人にまで減少している。
さらに、2017年には石炭の輸出量が増加したが、2019年には消費量と生産量が共に減少するとみられる。
トランプは、自ら公約した政策を推進する動きの一環として、さまざまな国際会議で石炭を売り込んでいる。2018年12月にポーランドのカトビツェで開催された気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)でも、アメリカの後援を受けたパネルディスカッションは、クリーンエネルギーではなく化石燃料の利用を促進するものだった。
(翻訳:ガリレオ)
ダニエル・モーリッツ・ラブソン
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