金正恩訪中と習近平の思惑――中国政府高官を取材
ニューズウィーク日本版 / 2019年1月10日 19時0分
非常な違和感を覚えた。それは違うだろう。いかにも日本人的で、部外者による「日本人好み」の、素人的な分析にしか聞こえない。ここでその理由を説明する前に、先ずは中国政府高官との質疑応答をご紹介したい。
Q:日本では金正恩訪中を米中の次官級通商協議の日程に合わせたのは、中国が米中貿易摩擦で困窮し、北朝鮮問題でアメリカに対して有利に立とうとしているからだという報道があるが、この関連性をどう思うか?
A:日本がどう言おうと勝手だ。好きなようにすればいい。ただ、事実は異なる。そもそもアメリカの通商交渉団が北京入りしたのは、あくまでもアメリカからのオファーであって、中国が要望したわけではない。昨年も劉鶴(現在、副首相)までが訪米したが、これとてアメリカの要請に中国が従っただけだ。
Q:そうだったのですか。
A:そうだ。中国側から要請したのは習近平のアメリカ公式訪問のときだけだ。
Q:となると、今回のタイミングの一致は?
A:これは金正恩側の都合だ。習近平はいま、北朝鮮にかまっている時間などない。しかし金正恩側から、「どうしても」という強い要望があった。アメリカより中国を重んじている証拠に、「何なら自分の誕生日を習近平との会談に捧げる」とまで言われて、断れなかった。アメリカの通商交渉代表団は8日には帰国するはずだったわけだから、時間的前後関係から言っても逆で、そのような解釈は全く説得力がない。中朝の現状を知らない者の邪推に耳を傾ける時間はない。
Q:たしかにアメリカの通商交渉代表団の帰国が9日まで延期されたのは、交渉内容が長引いたからで、本来、7日に交渉して8日には帰国することになっていましたね。
A:その通りだ。帰国した後に金正恩が訪中しても、「圧力」という視点から言っても整合性に欠ける。それに、金三(金正恩に対する蔑称。金一:金日成、金二:金正日、金三:金正恩)が習近平に要求する内容は、アメリカが喜ぶ内容ではなくて、アメリカを怒らせる内容だ。トランプは別で、トランプは喜ぶかもしれないが、アメリカ政府としては嫌がる。
Q:つまり、「米朝は話し合いをしているのだから対北朝鮮の制裁をやめろ」ということと、「北朝鮮国内の軍隊を説得するために早いとこ、一枚の終戦協定にサインしろ」という要求をアメリカに出したいので力を貸してほしいということですね?
A:その通りだ。トランプはイエスと言うかもしれないが、アメリカ政府は非常に嫌がる。通商交渉している相手は「アメリカ政府」だ。アメリカ政府が嫌がることを金正恩から引き出して、中国に有利になる要素が一つでもあるだろうか?日本のメディアの報道と、その中国研究者の分析というのは、論理破綻を来している。
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