知っておくべき年金改革:現役時代の給与が少ないほど年金の目減りも大きい!?
ニューズウィーク日本版 / 2019年1月11日 18時0分
このように、短時間労働者(パート労働者)への厚生年金の適用拡大と高齢者の就労促進については、具体的な結論には至っていないものの、年金部会で議論されている。その一方で、将来の基礎年金の水準が大幅に低下する問題への対処は、まだ議論されていない(12月20日時点)。
2014年の将来見通しでは、経済が改善する前提で、基礎年金(1階部分)の給付削減は2043年まで続き、給付水準が2014年と比べて▲29%、実質的に低下する見込みとなっている。他方、厚生年金(2階部分)の削減は2019年度頃に終わり、給付水準の低下が▲3~5%にとどまる見込みである。この結果、世帯年収別に見た年金額全体の実質的な低下率は、図表2のようになる。
このように、厚生年金より基礎年金で給付水準の実質的な低下(目減り)が大きいことは、会社員OBの中でも現役時代の給与が少ない人ほど、年金額全体の目減りが大きいことを意味する(太字は編集部、以下同じ)。現役時代の給与が少ないと厚生年金の金額が少なく、年金全体に占める基礎年金の割合が大きい。他方、目減りの程度は厚生年金より基礎年金で大きい。この2つを合わせると、現役時代の給与が少ない人ほど年金額全体の目減りが大きくなる。つまり、逆進的な給付削減になる。前回改正では、基礎年金の適用期間を現行の20~59歳から5年間延長し、その分だけ基礎年金の水準を底上げする案が検討されたが、国庫負担の増加を理由に法案化が見送られた。
この問題は、原因が基礎年金の大幅低下であるため、自営業など基礎年金だけ受給する人の問題だと考えられがちだ。しかし、基礎年金は受給者全員に共通した年金である。加えて、基礎年金の受給権者のうち加入期間が自営業等(第1号被保険者)の期間だけなのは、全受給権者の約1割、2017年に65歳になった受給権者では約4%に過ぎず、受給者の多くは、この逆進的な給付削減の影響を受ける。前述した社会保障制度改革プログラム法では、明示した4項目以外の「その他必要な事項」についても「検討や必要な措置を講じること」としている。この逆進的な給付削減の問題が「その他必要な事項」に該当するか否かや、国庫負担の増加を理由に見送らざるを得ない問題なのかについて、年金部会での議論を期待したい。
*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポートからの転載です。
[執筆者]
中嶋 邦夫 (なかしま くにお)
ニッセイ基礎研究所
保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任
中嶋邦夫(ニッセイ基礎研究所)
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