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中国が極超音速機をも撃ち落とす現代版「万里の長城」を地下に建設

ニューズウィーク日本版 / 2019年1月15日 14時0分

<中国の科学者はが山岳地帯の地下深くにあるという極超音速ミサイルの迎撃も可能な巨大防衛設備の存在を明言>

中国が、地下に広大な防衛施設を築いており、それはもはや迎撃不可能とされてきた最新鋭ミサイルも撃ち落とせる施設だと、ある専門家が明かした。

中国の国防への貢献が認められ、1月8日に国家最高科学技術賞を受賞した銭七虎は共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙環球時報に対して、中国は地下深くにもう1つの「万里の長城」を構築した、と語った。銭はここにある一連のミサイル関連施設を「最終防衛ライン」と呼ぶ。

同施設は山岳地帯の地下にあり、その厳しい地形だけでも、大部分の通常兵器から地下基地を守るのに十分だとされている。だが銭は露出部分を攻撃から守り、またバンカーバスター(地中貫通爆弾)から施設を守るために、施設の防衛機能をさらに強化したと言われている。

銭は、少なくともマッハ5、つまり音速の5倍の速度(時速約6110キロ)で飛ぶ極超音速ミサイルが飛来した場合に、ほかのミサイル迎撃システムが対応できなくても、同施設なら可能だとも語った。

「盾(防御)」の進歩は、「槍(武器)」の進歩に追いついていかなければならない。最新の攻撃用兵器が新たな挑戦をもたらすなか、「我が国の防衛技術はタイムリーな進化を遂げている」と銭は同紙に語った。

極超音速分野での開発競争が激化

かつて人民解放軍の少将だった銭(82)は、中国国務院が運営する政府機関である中国科学院と中国工程院の両方に所属している。国家最高科学技術賞の受賞者は1月8日、北京の人民大会堂で発表され、銭はレーダーの専門家である劉永坦と共に同賞を受賞。賞金は約118万ドルにのぼる。

1月11日付の環球時報に掲載されたインタビューの中で銭は自らの研究について、アメリカやロシアなどが超音速兵器の開発を進め、地政学的な不確実性が増したことも「万里の長城」建設の動機の一つだった、と語った。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2018年3月の年次教書演説の中で、音速の10倍の速度で飛行するとされる極超音速巡行ミサイル「キンジャル」と、音速の最大20倍で飛行するとされる極超音速滑空兵器「アバンガルド」を発表。どんなミサイル防衛網にも撃ち落とせず、「無敵」と説明した。

中国も極超音速ミサイルの開発には中国も乗り出しており、2018年8月、中国航天空気動力技術研究院は極超音速航空機「星空2号」の実験を行ったと発表。政府系英字紙チャイナ・デイリーによれば、「星空2号」は機体の衝撃波から揚力を得ることができる。最高速度はマッハ6を記録し、高度は約29キロに達した。



アメリカも極超音速技術を開発中で、2018年8月に戦闘機メーカーのロッキード・マーチンが、米国防総省から2種類の極超音速兵器の開発で数百万ドルの契約を受注した。またアメリカは2010年以降、ボーイングの極超音速航空機X51ウェーブライダー(最高速度マッハ6)の実験を行っており、NASAの無人超音速機X43はマッハ9.6を記録し航空機の最高速度記録を達成した(有人機の最高速度記録はロシアのミグ25のマッハ約2.8)。

米会計検査院は2018年12月に発表した報告書の中で「中国とロシアは極超音速兵器の開発を進めている。これらの兵器の速度や高度、操縦性をもってすれば、大部分のミサイル防衛システムを回避できるかもしれないからだ。通常および核搭載の長距離攻撃能力の強化に有効だ」と指摘。「現在これに対抗する手段はない」と結論づけた。

(翻訳:森美歩)


トム・オコナー

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