北朝鮮で市販中、男性向け「飢え死に予防」シャツ
ニューズウィーク日本版 / 2019年1月30日 16時0分
<北朝鮮に食べられるシャツ登場? ついに食べ物と服を合体させてしまったのか?>
北朝鮮では、餓死しそうになったらいつでも食べられる男性用シャツが販売されている。「食べられる服」は、カテゴリーの1つでもある。
このニュースを最初に伝えたのは、北朝鮮の首都平壌にある金日成大学に在籍するオーストラリア人大学院生アレック・シグリー。ニュースサイト「北朝鮮ニュース」のコラムで北朝鮮の服装研究センターが発行する男性ファッション雑誌をレビューしたのだ。
ボタンアップのドレスシャツ数点の写真を載せた記事の横に添えられた朝鮮語の記事を、シグリーは次のように英訳した。「この服は、高品質のタンパク質、アミノ酸、果汁、マグネシウム、鉄、カルシウムなどの微量元素で構成された人工のフランネル生地から作られており、航海や野外調査、登山に携わる人々のために開発された。食料が尽きたときには餓死を避けるために食べられる」
Spotted in a North Korean men's fashion magazine: edible shirts https://t.co/adjHMNAcU4 pic.twitter.com/Sg9CMipwKd— NK NEWS (@nknewsorg) 2019年1月25日
ページの反対側には、「水に溶ける服」の写真と説明がある。それによれば、故金日成(キム・イルソン)主席はかつて、「男性もいろいろな服を着て、さまざまな装いに挑戦してみるべきだ」と言ったという。
服装は意外とバラバラ
シグリーによれば、北朝鮮の男性の服装は、一般に他の国々よりも堅苦しい。スポーツや肉体労働に従事しているときを除けば、Tシャツなどのカジュアルな服装をしている男性はめったに見かけない。雑誌では、ボタンアップシャツに加えて、スーツやコート類、ネクタイが紹介されている。
過去には、北朝鮮の人々は全員、最高指導者(現在は金正恩キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長)と同じような服装をしなければならないという誇張した情報が広まったこともあった。
ジャーナリストのキャロル・ジャコモは2017年後半にニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、北朝鮮のファッションについて多くの誤解があることを指摘した。
「北朝鮮のことは、きわめて一元的な世界だとつい考えたくなる。国民の最も一般的なイメージといえば、軍服や民族衣装、その他さまざまな制服に身を包んだ何千人もの集団が大々的な示威行動に参加し、行進するところだ」。だが実際に北朝鮮を旅したところ、世界中の他の場所と同様に人々の服装はさまざまなスタイルと色彩にあふれていた、と彼女は書いている。
2012年以降、父親から権力の座を引き継いだ金正恩体制下で、北朝鮮のファッションは少し活気づいたといわれる。国際的な経済制裁に邪魔されて輸入が思うようにいかないなかでも、金はもっと高級な衣類の輸入を試みている。金の妻は国民が憧れるファッションリーダー的存在だ。
それでも、厳重に管理された北朝鮮の社会では、これまで服装に関する規則はけっこう厳しかった。北朝鮮から亡命したソン・ウンビュルは以前ガーディアン紙に、服装規定を無視すると罰を受ける可能性はある、と語ったことがある。ただし今は、それほど厳しく適用されなくなったと彼女は言う。
「ゆったりしたものなら、女性がズボンをはくこともできるようになった。平壌中心部に行くときは伝統的な服をならなかったけど」
(翻訳:栗原紀子)
ジェーソン・レモン
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