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「日韓首脳は状況打開のために早期の会談を」

ニューズウィーク日本版 / 2019年2月1日 17時30分

仲裁委員を含めて外交による解決が困難となればICJに行き着くことになるが、そもそも日韓両政府がその方法に合意するかさえ分からない。韓国側について言えば(昨年10月に元徴用工による個人的な賠償請求権の効力は消滅していないとの判決を出した)韓国最高裁の判断を受けて、韓国政府がどのような方針を取るのかという点に関して内政上の合意形成が必要になるが、これもまだ成されていない。

一方でレーダー照射問題については、実際に何が起きたのか知る立場にはない。韓国の国防省は私や日本の専門家にも情報を提供していない。ただ韓国ではこんな疑問が出ている。レーダー照射されたら命を守るために退避すべきはずだが、日本の哨戒機は逃げずに韓国駆逐艦の上空を周回して複数の写真を撮るなどの「余裕」があった、と。そうした疑念もあることから、日本が少し過剰に反応したのではとみられている。

技術的な真相は分からないが、この問題は両国間の相互不信に起因しているのではないかと考えており、現在の日韓関係をよく反映していると思う。



――文大統領は「日本が謙虚になるべき」と発言し、日本政府は「韓国が最初に国際法違反を犯した責任を日本に転嫁している」と応酬した。

文が「日本が謙虚になるべき」と発言したのは歴史的な観点についてだ。この発言の真意については、李洛淵(イ・ナギョン)首相がより明確に発言している。つまり、「日本は歴史に対して謙虚になるべきである一方、韓国は未来に対して謙虚になるべきである」と。

韓国政府の基本的な対日姿勢は1998年に当時の金大中(キム・デジュン)大統領が日本の国会で行った演説で述べられている。つまり成熟した未来志向の関係ということであり、これに対して当時の小渕恵三首相は日韓の歴史問題に触れた。

――両国政府による非難の応酬が高まる一方で、韓国の世論は比較的おとなしいと日本ではみられている。

最初の段階では韓国メディアも静かだったが今は違う。確かに、文の年頭会見で韓国の記者は誰も日韓関係について質問しておらず、文自身も日本人記者から質問されるまでは何も語らなかった。この状況が示しているのは、今の青瓦台(韓国政府)において日韓関係が優先順位の高いアジェンダではないということだろう。あるいは、日韓関係の問題に対して、確たる対応策がないということかもしれない。

――文政権の親北路線が対日外交に影響していると思うか?

日本は昨年の平昌冬季五輪以降、(東アジア外交において)疎外感がある、という見方ができる。例えば、かつては北朝鮮の核開発問題に対処するための日米韓調整会合(TCOG)があったが頓挫した。そして昨年来、北朝鮮が(米韓などに対して)融和姿勢に転じ協議を始めた一方で、日本は拉致問題を抱えているために北朝鮮の言動を信頼できないでいる。現在のこじれた日韓関係は、両国政府の対北朝鮮外交の違いを反映していると思う。ただ、2度目の米朝会談の進展次第では(北朝鮮情勢をめぐって)日韓の協力が必要になるときが来るだろう。歴史問題はもちろん重要だが、一方で少し新しい日韓関係を構築する必要性も生まれている。

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