中国のAI巨大戦略と米中対立――中国政府指名5大企業の怪
ニューズウィーク日本版 / 2019年2月12日 15時0分
奇妙なのは、このセンスタイムが香港の企業だということである。2014年に香港中文大学工程学院の湯暁鴎教授が創設した。彼はAI技術の核を成すディープラーニングが専門だ。
センスタイムは香港発の企業であるだけでなく、実はクァルコムと深い関係を持っている。中国政府が香港企業を選んだのは、マカオや香港などの特別行政区をカバーする必要があるからだと中国政府文書にはあるが、センスタイムは2017年11月15日にクァルコムからの巨大投資を受け、ディープラーニングを中心としてAIとVR(Virtual Reality=仮想現実)やAR(Augmented Reality=拡張現実)を結びつける分野を共同開発している。
今や、Huaweiかクァルコムかで米中が争っているそのクァルコムと提携しているセンスタイムが、中国政府の指定5大企業の中の一つであるというのは、どう考えても整合性に欠ける。水面下で何が起きているのか、注視しなくてはなるまい。
米中どちらがAI覇権を握るか――中国の量子コンピュータ
AI覇権を米中どちらが握るかに関しては、AIそのものの技術以外に、二つの決定要因が絡んでくる。
1つは資金力とイノベーションの問題で、これはGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)(ガーファ)が自由競争というボトムアップの中からイノベーションを生み出してきたのに対して、BATISは一党独裁国家が国家プロジェクトとしてトップダウンで国の予算を配分している。
資金力という側面から見たら、文句なしに中国が強いことになる。しかし独裁国家からイノベーションが生まれるのかとなると、「生まれにくい」と思うのが常識的だ。
ところが中国の場合、拙著『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』で詳述したように、欧米に留学した膨大な人材が中国に帰国しているので、必ずしも「独裁政権ではイノベーション的思考が止まってしまう」とも言いきれない現状にある。特に中国は月の裏側への軟着陸とか、人類には解読不能な量子暗号による量子通信に成功したりなどしている。これはアメリカよりも先んじているので、イノベーションの力よりも資金力の方がものを言っているかもしれない。
二つ目に重要なのはビッグデータの処理に必要な量子コンピュータの存在だ。中国はアメリカにやや先んじて量子コンピュータの試験的制作に成功しているので、必ずしも全てがアメリカの後塵を拝することになるとも限らない。
この記事に関連するニュース
-
兼原信克 安倍総理の遺産 GHQと独立後の左傾化…歪められた日本の科学技術、産業技術政策 安保技術開発促進の10兆円基金創設を
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月6日 15時0分
-
中国、「テロ対策」名目に締め付け強化 ウルムチ暴動15年「息苦しい状態」とウイグル人
産経ニュース / 2024年7月5日 21時12分
-
中国独自のイノベーション能力、比較的弱い=習主席
ロイター / 2024年6月25日 12時5分
-
なぜ巨大IT企業の「日本への建設ラッシュ」が起きているのか…「これからは中国より日本」というIT業界の本音
プレジデントオンライン / 2024年6月24日 8時15分
-
【米中覇権争い】アメリカの「戦略的要衝」カリブ海でも高まる中国の影響力、「キューバ危機」の再来も!?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月14日 13時26分
ランキング
-
1ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月7日 13時20分
-
2バルセロナ住民、オーバーツーリズムに抗議 スペイン
AFPBB News / 2024年7月7日 14時41分
-
3台湾・民進党「将来の総統候補」を汚職容疑で検察捜査…中国との窓口機関代表も務める知中派
読売新聞 / 2024年7月7日 14時3分
-
4フランス国民議会、決選投票開始…極右系政党が第一党も過半数届かず「中ぶらりん議会」の公算
読売新聞 / 2024年7月7日 19時34分
-
5盧溝橋事件から87年 北京市の式典に中国共産党最高指導部メンバーは出席せず
産経ニュース / 2024年7月7日 18時42分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)