中国が2035年までに原子力空母4隻を建造、米軍と並ぶ
ニューズウィーク日本版 / 2019年2月15日 14時30分
<中国海軍の軍事力は米海軍に匹敵するレベルにまで増強されるが、戦闘経験不足のために戦闘力では及ばない>
中国海軍は、2035年までに米海軍に追い付くことを目標に、戦闘機を搭載できる新たな原子力空母4隻を建造する計画だ。中国海軍は現在2隻の空母を所有していることから、最終的には空母6隻による戦闘態勢を構築する構想だ、と香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙が今月13日に報じた。
中国の新たな空母には、現行の蒸気式カタパルトよりも戦闘機の射出が容易な電磁式カタパルト(EMALS)が搭載される。これで中国海軍の装備は米海軍に匹敵するが、中国海軍には実際の戦闘経験が不足しているという問題がある。
「電磁式カタパルトが搭載された原子力空母は、2035年までに海軍に配備される見通しだ。これによって中国海軍の空母は6隻になるが、戦線に投入されるのは4隻だろう」と、中国海軍の元駆逐艦乗組員で軍事専門家のワン・ユンフェイは同紙の取材に答えている。ワンはまた、米軍と同レベルに達するまで中国は軍事力を増強しなければならない、と話している。
ワンはさらに、中国の景気減速は空母の建造予算に影響しないだろうし、もし影響したとしても、軍事支出全体の中で調整することで海軍全体の近代化が止まることはないだろう、と見ている。
「中国軍の近代化のための予算は、例え中国が武力で台湾を統一すると決断してもカットされることはない。戦争を想定したシナリオでも、中国政府はインフラ整備等の支出は減らすかもしれないが、軍事支出は増やすだろう」
複数の原子力空母による戦闘態勢
習近平(シー・チンピン)国家主席は、2035年までに人民解放軍を近代化し、2050年までに世界トップクラスの軍事力となるよう指示している。この近代化の中で、陸軍部隊を減らして空軍、海軍にもっと予算を割くように命じている。
中国の通常型空母「002型」の建造は2018年に開始され、中国で初めて電磁式カタパルトが装備される。香港の軍事テレビコメンテーター、ソン・チョンピンは、「電磁式カタパルトを装備した通常型空母は『002型』だけになるだろう。今後中国は、複数の原子力空母による戦闘態勢を構築するからだ」と話している。
現在、中国は2012年に就役した空母「遼寧」だけが実戦配備され、国産空母「001A型」はまだテスト段階にある。「遼寧」は旧ソ連で設計された船体を建造途中でウクライナから購入して中国で完成させた空母で、乗組員の訓練に使用されている。
中国海軍はさらに空母搭載の戦闘機も開発する計画を進めている。現在、中国で配備されている艦載機は「J-1」だけだが、米軍では2タイプの艦載機が配備されている。
前述の軍事専門家2人は、中国軍の総合的な軍事力は戦闘経験の不足によって限定されるものの、空母や艦載機の技術は米軍と匹敵するレベルになるだろうと見ている。
中国は、海軍力の近代化を早急に進めることが貿易航路の安全確保や公海上の平和維持に必要だと主張してきた。またこれまで中国軍は平和維持に貢献してきたし、新たな海軍力は公海上のパトロール活動に使用されるとも主張している。
しかし日本やアメリカなどの関係国は、こうした中国の主張には懐疑的で、中国が敵対的な姿勢に転換したと見ている。さらに、中国が南シナ海や東シナ海で、周辺国との間に領土問題を抱えていることが、海軍力の増強に駆り立てる要因になっていると見ている。
マドゥール・デーブ
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