痛恨のアマゾン第2本社撤回、「もう企業きてくれない」とNY州が反対議員を猛批判
ニューズウィーク日本版 / 2019年2月26日 16時21分
<多くの雇用と税収を失うことになった責任は、アマゾンの計画に賛成だった多くのニューヨーカーにもある。「声なき多数派」が「雄弁な少数派」に負けたのだ>
ニューヨーク州のロバート・ムヒカ予算担当官は2月22日に公開書簡を発表し、ニューヨーク市に第2本社の一部を建設しようとしたアマゾンの計画に公然と反対した連邦議員や州議会議員、一部の組合を激しく非難した。
ムヒカはアマゾンの計画について、ニューヨークにとって過去25年で「唯一最大の経済開発のチャンス」だったと指摘。アマゾンが進出を諦めたことで、いつかニューヨーク州で事業を展開したいと考えていた企業も二の足を踏むだろう。ツイッターで巻き起こった反対を理由に計画に反対した人々は、経済のことが分かっていないと主張した。
公開書簡は州知事のウェブサイトに掲載された。アマゾンの件から教訓を得てもらうためだと彼は言う。
「我々は最終的に270億ドルの収入と2万5000~4万人分の雇用を失い、『企業の受け入れに前向き』だという評判にも大きな傷がついた」とムヒカは書いている。「計画に反対した組合が得たものは何もなく、彼らはほかの組合の組合員から1万1000人分の高賃金の仕事を奪った」
「数学と経済学の基礎も分かっていない」
ムヒカは、アマゾン側に提供されることになっていた助成金や税優遇措置は別のところに投資すべきだと主張した政治家たちは、数学や経済学の基礎も「わかっていない」と批判した。
「驚くことに、計画に反対の市や州の当局者たちは、アマゾンが助成金として受け取る30億ドルは住宅や交通部門にまわした方が有益だっただろうと言っていた」とムヒカは書いている。「これは見え透いた嘘であり、基本的な数学を根本から無視した発言だ。市と州はアマゾンに何も『与えて』はいない」
ムヒカによれば、アマゾンが市と州にもたらす税収は(同社が得る30億ドルの9倍の)270億ドルにのぼる見込みだった。最大30億ドルの税制優遇措置も、2万5000~4万の雇用が生まれれば、という条件だった。「州の予算担当官でなくとも、9倍のリターンが得られる投資が成功だということは分かるはずだ」
彼は、アマゾンの第2本社をめぐって北米200超の都市が誘致を競っていた時には提案に合意しておきながら、後になって反対の声を上げた一部の議員を強く非難した。
「これらの一部議員たちは、アマゾンがロングアイランドシティに第2本社を建設することを支持する書簡に署名していた。ツイッター上で反対の声が上がるまでは、みんな計画を支持していた」とムヒカは書いている。「一部強硬な反対意見は常にあるものだが、今回のケースでは彼らが異様な力をもった。州議会上院は意思決定の権限を反対派の一人の上院議員に移譲し、さらに彼を同計画への融資の承認を行う委員に任命した。これでアマゾンは、計画の見通しは暗いと考えた」
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
トランプ氏有罪評決は共和党の団結を促すも、選挙への影響は不透明(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月3日 10時45分
-
政界を腐敗させた責任の半分は財界にある…利権を握らぬ政治家は「実力者」になれないという自民党の構造問題
プレジデントオンライン / 2024年6月3日 8時15分
-
バイデン米大統領、国境措置強化法案否決に対して声明文を発表(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月31日 0時30分
-
アングル:熱帯雨林アマゾン、道路整備に賛否 干上がる水運
ロイター / 2024年5月20日 8時53分
-
米大統領選、共和党のジョージア州前副知事がバイデン大統領支持を表明(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月9日 10時40分
ランキング
-
1北朝鮮の汚物風船、韓国で被害続出…旅客機運航に支障、車のフロントガラス粉々に
KOREA WAVE / 2024年6月3日 20時0分
-
2カーン元首相に逆転無罪=機密漏えい事件、収監は継続―パキスタン
時事通信 / 2024年6月3日 22時23分
-
3イラク、バグダッドで再びKFC店舗襲撃 少なくとも12人拘束
ロイター / 2024年6月4日 8時1分
-
4「靖国神社は侵略戦争の象徴」 中国外務省が落書きで主張、「外国では理性的に」と注意も
産経ニュース / 2024年6月3日 19時11分
-
5中国、月面裏側で試料採取 世界初、地球持ち帰りへ
共同通信 / 2024年6月4日 11時22分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください