ハノイ米朝会談をトップニュースから吹き飛ばした「コーエン証言」の衝撃 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2019年2月28日 16時45分
そのコーエン証言ですが、全体的な評価としては、
1)トランプ陣営が、ウィキリークスに「ヒラリーのeメール暴露」を依頼したという疑惑は「事前にトランプの指示を仰いで行なった」という明確な証言が出た。これは多くのメディアの予想を上回る内容だった。
2)ポルノ女優との不倫に関する「口止め料」については、大統領がコーエンに対して「自腹で立て替える」よう強制し、その後違法な形で返金。また、大統領夫人には口止めするよう言われたという証言が出た。これは予想の範囲だったが、肉声での証言には意味があった。
3)一発で大統領を弾劾に追い込むような「一撃」はなかったが、大統領は「人種差別主義者」であり「詐欺師」であり「不正を働く人間」だと断言し「自分は大統領の言うままに違法行為に手を染めた」ことを「深く後悔し」ていると言う、コーエン証言は大統領の信頼度を揺るがす効果はあった。
4)共和党議員が何度も議事進行を妨害し、コーエンを「嘘つき」と追及。これに対してコーエンが議員に対して「恥を知れ」と応酬するといった光景から、共和党の一部下院議員がトランプ政権と「一蓮托生」状態にあることが、あらためて浮き彫りになった。
ということが言えると思います。それ以上ではないが、それ以下でもないということです。
多くのメディアでは、大統領が政治的に窮地に陥っていることで、ハノイ会談への悪影響が出る可能性を警戒しています。つまり「サプライズ効果を狙って、過剰な譲歩をするのではないか」という可能性と、「反対に関係を壊して話題作りをする」という可能性もあるというのです。
国際社会にとっては「コーエン証言」と「ハノイ会談」を比較すると、後者の結果が注目されています。ですが、アメリカ国内では必ずしもそうではないこと、また、2つの問題が絡み合うことで、アメリカの国益や国際社会の利益が損なわれることが懸念されているということは、注目に値すると思います。
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