国家崩壊ベネズエラ、アメリカは遂に力でマドゥロを排除するか
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月13日 16時30分
<トランプはかつて側近に、「アメリカはなぜベネズエラに侵攻して独裁者を排除しないのか」と尋ねたことがある>
アメリカ政府は、最後まで残っていたベネズエラ駐在の米大使館職員全員に帰国命令を出した。トランプ政権がベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を退陣に追い込むために仕掛けた政治的、経済的な圧力が功を奏さず、膠着状態に陥っているなかでの決断だった。
マイク・ポンぺオ米国務長官は3月11日、ベネズエラに残留しているアメリカ人外交スタッフがマドゥロと「暫定大統領」就任を宣言したフアン・グアイド国会議長との権力闘争に巻き込まれることを懸念し、ベネズエラからの完全撤退を発表した。ポンぺオによると、アメリカ人職員は全員、週末までに帰国するという。
ベネズエラでは3月7日以降、全国規模の停電が続いており、主要都市の交通運輸は麻痺し、水の供給は途絶え、冷蔵庫の貴重な食料は腐敗するなど、もともとの生活困窮に拍車をかける大混乱に陥っている。マドゥロは、大規模停電はアメリカが発電用ダムに攻撃を仕掛けたせいだと非難した。
ポンペオは即座にこれを一蹴、「今回の帰国命令は、ベネズエラの状況悪化と、米大使館に外交職員が残留していると政策の自由度が制限されるとの判断によるものだ」とツィッターで説明した。
若きリーダーへの期待
マドゥロはウゴ・チャベス大統領の死去に伴い後継者として2013年に大統領に就任。それ以降、独裁的な権力を維持している。彼の経済政策は国を窮地に陥れ、何百万人もの国民が国外へ逃れるほどの危機を引き起こした。政権幹部は私腹を肥やし、数々の腐敗と相次ぐ人権侵害で国内外から非難されている。
グアイド(35歳)は野党主導の国民議会における若きリーダーで、今年1月に暫定大統領への就任を宣言した。グアイドは昨年5月の大統領選挙におけるマドゥロの勝利が違法だったと主張。そのような場合、ベネズエラ憲法は、新しい選挙が行われるまで国会議長が暫定大統領になると定めている、とグアイドは言う。
ドナルド・トランプ大統領はただちにグアイドへの支持を表明した。この若いリーダーを合法的な暫定大統領と認め、マドゥロの辞任を求めた。
トランプ政権はグアイドの暫定大統領就任を支持すれば、すぐにマドゥロの失脚につながると期待していた。ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、トランプ政権は数カ月にわたって議論を重ね、グアイドと連携する計画を立てていた。
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
ガザ紛争、誰が統治するかがポイント
Japan In-depth / 2024年6月11日 13時45分
-
「信じ難いほど不人気...」ガザ戦争で逆風のバイデン、再選のカギ握るのは「激戦州の少数派」
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月5日 10時43分
-
不倫口止め料裁判「有罪評決」のトランプ前米大統領を「擁護」...ジョンソン元英首相の論理とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月1日 18時0分
-
イランのライシ大統領墜落死で革命と神権政治の仮面をかぶった「暴力国家」に加わるさらなる嘘
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月31日 17時21分
-
情報BOX:関税引き上げから不法移民送還まで、トランプ氏「2期目」の公約
ロイター / 2024年5月24日 13時51分
ランキング
-
1イスラエルが空爆、ガザ市で42人死亡=ハマス司令官標的か
時事通信 / 2024年6月22日 22時34分
-
2習政権が〝死刑恫喝〟台湾独立派による「国家分裂行為」の処罰指針発表 あいまいで広い範囲が対象に
zakzak by夕刊フジ / 2024年6月22日 15時0分
-
3プリゴジン氏が糾弾した前国防相に近い政府高官を次々粛清…プーチン露大統領、世論の批判そらす狙いか
読売新聞 / 2024年6月22日 19時48分
-
4プーチン氏訪朝で「懸念」=日ロ局長が会談―モスクワ
時事通信 / 2024年6月22日 7時34分
-
5右傾化するヨーロッパと左傾化するイギリス
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月22日 16時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)