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イタリア、ウクライナ、グアテマラ......お笑い芸人が政治を支配する日

ニューズウィーク日本版 / 2019年3月13日 17時30分

08年のアイスランドの金融危機後にナールが有権者の支持を得たのも、ずけずけと無遠慮な物言いや芸人らしい軽いトーンのおかげだ。彼の率いるベスト党はパンクロッカーや主婦など政治の素人の集まり。「市営プールに無料のタオルを置く」「レイキャビクの動物園でホッキョクグマを保護」といった公約を掲げて市議選で大躍進した。



アルメニアの首都エレバンでも、昨年9月の市議選を経て人気コメディアンのハイク・マルチアンが市長に就任。当初は、市内の観光名所「エレブニ要塞」での4Dライトショーの実施を公約に掲げていた。

好感度の高さだけがコメディアンの強みではない。敵をこき下ろすジョークには笑いを取るだけでなく、肝心な論点から有権者の目をそらす効果もある。ソーシャルメディアの台頭で、この効果は一層高まった。選挙戦中の面白い発言がどんどん拡散され、有権者の関心は政策よりもそちらに集まってしまう。

しかもネット時代にはメディアも視聴者や読者の注目を引こうと必死で、政治ニュースがエンターテインメント的な性格を帯びつつある。そうなると、派手な候補のほうが断然有利だ。

その典型が、16年米大統領選のドナルド・トランプだろう。対抗馬に無遠慮に個人攻撃を加え、おバカなコメントを連発。メディアは日々その動向を伝え、「トランプ旋風」をあおる結果になった。

リスクには注意が必要

筋金入りのEU懐疑派で、ロンドン市長を務めた後、昨夏に辞任するまで外相の座にあったボリス・ジョンソンも、おちゃめな親しみやすい政治家として知られる。差別発言などが問題になっても、人気が衰えないのはそのおかげだろう。

もともと認知度が高く、ソーシャルメディアでの自己PRにもたけたコメディアンは、既成政治に不満を持つ人々の支持をつかみやすい。そうは言っても政治経験の少ない候補者に希望を託すのは、不合理にも見える投票行動だ。

だがそれも、行動経済学の観点からは「確実な損失」を避ける行動として説明できる。既成政治家が居座れば、現状が続くのは目に見えている。政界のアウトサイダーに賭けたら、少なくとも何らかの変化が起きるだろうと、有権者は考える。

ただし、政権運営には実務能力や知識や経験が求められる。アウトサイダーは選挙戦では有権者を大いに沸かせても、有能なリーダーになるとは限らない。

コメディアンに未来を託す危うさは、グアテマラを見れば分かる。モラレス大統領は1月、国連との合意で設置された汚職調査委員会の廃止を一方的に通告した。

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