野生動物を「大絶滅」から救う初の世界地図
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月14日 19時0分
以下に示すのは、動物ごとの生息域と人為的脅威度を合わせて作成した初めての世界地図だ。その結果、世界で最も人為的な大絶滅が迫るホットスポットは東南アジアだった。マレーシア、ブルネイ、シンガポール、インドネシア、ミャンマーの5カ国ではとくに人為的脅威が深刻だ。
豊かなマングローブの林や熱帯林など、地球上でも最も生物多様性に富んだ生態系が人間活動のために失われつつあるからだ。
■「ホットスポット」マップ(脅威にさらされている種の数で色分け)
Hotspots of threats and threatened species richness.
Allan et al. Plos Biol., Author provided
野生動物の生息域のうち人為的脅威がないエリアを重ね合わせて、クールスポットの世界地図も作成した。これらのエリアは野生動物にとって地球上に残された最後の楽園であり、銃や罠、ブルドーザーに脅かされる動物たちが逃げ込めるシェルターとして、保護活動の重要な拠点となる。
クールスポットには、アマゾンの熱帯雨林、アンデス山脈、ヒマラヤ東部、西アフリカのリベリアの森林などの一部が含まれる。
■「クールスポット」マップ(脅威にさらされていない種の数で色分け)
Coolspots of unimpacted species richness.
Allan et al. Plos Biol., Author provided
希望はある。私たちが挙げた人為的脅威はすべて、規制を導入することで取り除けるものばかりだ。だがそのためには財政的政治的な支援が不可欠だし、優先エリアに集中的に資源を投入する必要もある。
まずは、保護区を設置するなどして、脅威にさらされた動物が逃げ込める安全地帯を確保することだ。
ほとんど、あるいはまったく逃げ場がない動物を救うには、「積極的な脅威コントロール」が必要になる。これはパトロールの徹底などを通じて、既存の生息地からできるかぎり脅威を取り除くやり方で、成功例もある。ネパールでは2009年以降、おもに重点地域を絞り込んだ密猟対策により、トラの生息数が倍増した。
密猟対策と生息地の保全は、相互に補完的な保護活動であり、並行して進めれば大きな成果が上がる。私たちの調査はこうした活動のため、また国や国際機関が有効な保護計画を立案するために役立つはずだ。
The authors acknowledge the contributions of Hugh Possingham, Oscar Venter, Moreno Di Marco and Scott Consaul Atkinson to the research on which this article is based.
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