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斎藤工&松田聖子『家族のレシピ』のエリック・クー監督に聞く

ニューズウィーク日本版 / 2019年3月15日 16時30分

――戦時中のシンガポールの話も出てくる。改めて日本のシンガポール侵略の歴史を知る観客も多いと思う。

確かに、今回仕事をしたフランスの配給会社の人々は、シンガポールが日本に占領されていたことを知らなかったと言っていた。特に第三者の立場では、知らない人が多いと思う。

この映画のテーマの1つは「許し」だから、歴史を省略することはできなかった。私の友人たちからも、家族が日本軍に殺された、レイプされた人がいるという話は聞いてきた。そうした歴史を糸の1つとしてエンディングにかけて編み上げていくと、物語に深みが出ると思った。

――今はそうした記憶が語られることはほとんどない?

ないですね。初代首相の故リー・クアンユーが60年代に日本を訪れ、大ファンになった。シンガポールは緑あふれる「ガーデンシティ」と呼ばれるが、その街並みをデザインするのに日本から景観専門家や建築家を呼び寄せたんです。HDBという公共住宅は日本の団地をモデルにしている。日本人の礼儀正しさや、相手に敬意をもって温かく接する、そうしたところにもリー・クアンユーは魅せられた。

同じように、今も多くのシンガポール人が日本に魅了されている。その大きな要素は日本食だが、両国を行き来する人数では不均衡なほど多くのシンガポール人が日本を訪れている。

私の世代でいえば、日本のポップカルチャーに大きな影響を受けた。私も仮面ライダーで遊び、テレビで松田聖子を見て、YMOを聴いた。でも今の世代なら、それはKポップだろうね。



――斎藤工さんとは以前から交流があった?

『TATSUMI』を東京国際映画祭でお披露目したとき、別所さんがパーティーを開いてくれた。そのとき工とは挨拶を交わした程度だったが、一昨年の始め、具体的に話を持ち掛けてスカイプで話したところ、真人の役にパーフェクトだなと思った。

真人の叔父役のマーク・リーはシンガポールの有名コメディアンですごく面白い人。彼と工の掛け合いはほぼアドリブでやっている。マークにはシングリッシュ(シンガポール独特の英語)の話し方をしてほしいと頼んだので、工はあまりよく分かっていないみたいだったが(笑)。マークが工をシンガポールのいろんな場所に連れ出してくれて、その仲のいい感じが現れていると思う。

今回の脚本は英語で書かれたものを日本語に訳したが、別所さん、伊原さん、聖子、工はみんな英語を理解するので、読み合わせのときに「このセリフはぴんとこない」とか「こう言ったほうがいい」とかアイデアを出してくれたのがとても良かった。

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