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四川省出身のチャイナラッパーが世界に大躍進

ニューズウィーク日本版 / 2019年3月19日 18時0分

17年に大きな反響を呼んだシングル「メイド・イン・チャイナ」では、中国人に対する偏見の矛盾を突いた。歌詞には「俺のチェーンと腕時計はメイド・イン・チャイナ」といったくだりがある。

「メイド・イン・チャイナ」のMV


曲のイントロには、グループの専属通訳で映像作家でもあるラナ・ラーキンの声が入る。「ラップ? 中国の? いったいなんて言ってるの? これが中国のラップ? 『チン・チャン・チョン』としか聞こえないんだけど!」。そうした中国人ラップへの懐疑的な見方に反論するために、メンバーは「メイド・イン・チャイナ」を作った。

「本当に腹が立った」と、サイPは語る。「テレビをつければ、アメリカの人たちが中国製品をたくさん持っていると分かった。そこで、そのことを曲にしようと思った」。この曲のミュージックビデオは、YouTubeで1500万回以上再生された。



映画やファッションデザインの分野では、世界で活躍する中国人が珍しくなくなった。しかしヒップホップアーティストの活動は、国内の厳しい検閲に妨げられてきた。

中国のミュージシャンは、政府ににらまれることを避けつつ、本音の作品を送り出して商業的に成功するという、難しい課題を突き付けられる。PG OneやGAIなど、中国の有名なヒップホップアーティストには、歌詞が共産党の価値観に反するという理由で厳しい批判を浴びたり、放送禁止にされたケースもある。

セカンドアルバムの『ファイブ・スターズ』 88rising

その点、ハイヤー・ブラザーズは違う。ソロで活動していた頃のメロが当局との間で小さないざこざを経験したのを別にすれば、警察とトラブルになったことはないと、4人は本誌に語る。過激な歌詞や、お上品とは言い難い服装を考えると、驚くべきことだ。

国外のファンや批評家の中には、歌詞が意図せずに共産党のプロパガンダになっていることが成功の要因ではないかと考える人もいる。

この仮説を裏付ける具体的な根拠はほとんどないが、歌詞が外国人のファンを逃がさないようにしながらも、さりげなく中国人のナショナリズムに訴えていると指摘する人は少なくない。もっとも、共産党がハイヤー・ブラザーズの躍進を容認している本当の理由が明らかになることはないだろう。

いずれにせよ、ハイヤー・ブラザーズがアメリカでの活動をさらに広げようと思えば、メディアから中国の検閲について質問を浴びせられることは覚悟しなくてはならない。

一方、好ましい材料もある。いまアメリカのヒップホップ界は、新鮮なサウンドと外国のミュージシャンを受け入れる傾向がこれまでになく強まっている。

メンバーもそれに意を強くしているようだ。「アメリカにはあらゆる人種と国籍のパフォーマーがいる」と、メロは本誌に語った。「それぞれが自分なりのエネルギーと感性でライブに臨んでいる」

<本誌2019年03月19日号掲載>



※3月19日号(3月12日発売)は「ニューロフィードバック革命:脳を変える」特集。電気刺激を加えることで鬱(うつ)やADHDを治し、運動・学習能力を高める――。そんな「脳の訓練法」が実は存在する。暴力衝動の抑制や摂食障害の治療などにつながりそうな、最新のニューロ研究も紹介。






クリスティーナ・チャオ


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