トランプのロシア疑惑、捜査「終結」の意味 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月26日 10時40分
では、大統領の疑惑は完全に晴れたのかというと、必ずしもそうではありません。個人の脱税疑惑、リゾート・カジノ事業など法人との公私混同疑惑、さらには、ロシアとの関係における不道徳な行為の噂など、「弾劾には値しないが、公表されると困る問題」はまだまだ残っていそうです。
また、司法妨害に関しては、大統領個人への捜査ができなかったために証拠不十分になったという、何とも微妙な判断が下されました。そこで、焦点となるのは、
▼ムラー報告書の具体的な内容がどこまで公表されるのか?
▼その他、議会(特に下院)の国政調査権発動で、大統領の確定申告書などの公表は可能か?
という問題です。特に「ムラー報告書の具体的な内容」には関心が集まっています。今回の「共謀なし、訴追もなし」という決定を受けても、大統領自身の「機嫌」は直っていないようですが、それはこうした点への警戒感・不安感があるからかもしれません。
そんなわけで、今回の「バー司法長官書簡」は、トランプ政権をめぐるスキャンダルにとって、一つの大きな転換点になるとは思いますが、これで大統領の再選の可能性が大きくなった、とまでは言えないという評価になるでしょう。
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