ADHDに「倫理に反する。費用もかかる」救世主が現れた?
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月25日 16時10分
【関連記事】暴力・性的暴行の衝動は電気刺激で抑えられる──研究
別の医師も匿名を条件に、ここ数年で約30人の患者にTMSを実施したと本誌に語った。「勤務先のクリニックは富裕層向けで、多くの患者が保険外診療を受けていた。だから可能だった」
しかしボスらは、リスクが大き過ぎると考える。TMSで脳の特定部位の機能は改善しても、別の部位に悪影響が出るかもしれない。脳が未発達な子供の場合は特に心配だ。治療効果が科学的に証明され、危険はないとする十分なデータが集まるまでは「子供にTMSを受けさせるべきではない」と、ボスは強く訴える。
TMSも無痛ではない。けいれん発作のリスクもある。「ハンマーで頭をたたかれる感じ」だったと、ゲッタも言う。それでも治療を続けたのは「魔法みたいに効いたから」だ。「授業も人の話も聞けるようになって、まともな人間になれた気がした」
少なくとも、ゲッタの症状には有効だったようだ。
<2019年3月19日号掲載>
【関連記事】プロスポーツ界も注目! 脳に電気刺激を与え能力を高めるヘッドホン型デバイス
※3月19日号は「ニューロフィードバック革命:脳を変える」特集。電気刺激を加えることで鬱(うつ)やADHDを治し、運動・学習能力を高める――。そんな「脳の訓練法」が実は存在する。暴力衝動の抑制や摂食障害の治療などにつながりそうな、最新のニューロ研究も紹介。
キャサリン・エリソン
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