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米欧、そしてロシアも「共通の脅威」中国に立ち向かうべき

ニューズウィーク日本版 / 2019年4月1日 14時0分

アメリカの元政策担当者の間では、こんな臆測が広がった。トランプはNATO条約の第5条にある集団防衛の約束を守る気がないのではないか、あるいはNATOそのものから脱するつもりではないか......。



ミュンヘン安全保障会議の直前にワルシャワで開催されたアメリカ主導の中東会議では、米欧間の亀裂はさらに明確だった。フランス、ドイツ、イタリアの「古いヨーロッパ」は閣僚の派遣を見送り、アメリカのマイク・ペンス副大統領とマイク・ポンペオ国務長官ばかりが目立つ結果に。会議の狙いはイランの孤立化だったが、孤立したのはアメリカのようだった。

米欧の対立が表面化した時期もよくない。ロシアはアメリカを核兵器で脅迫するだけでなく、国内の反対勢力をアメリカの「手先」として攻撃している。プーチンは、インターネットを利用してスパイ行為をしていると欧米を非難。ロシア下院は国内と国外のインターネット通信を遮断する法案を議論している。

その一方で、欧米とロシアにとって共通の長期的・戦略的懸念が浮上してきた。中国の台頭だ。2月末の米朝首脳会談が決裂した背景には、中国の動きがあった可能性もある。中国は伝統的に(もっともらしく否定しながら)北朝鮮を対米用の「破壊工具」として利用してきた。

中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は2018年中に金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と複数回会う一方、経済力を北朝鮮へのアメとムチのように使い、「君主」としての地位を示唆している。米中関係の現状を考えると、北朝鮮と満足のいく合意に達する可能性があると判断したトランプは甘過ぎた。このアメリカの甘さ故に、中国はさしたる反発もなく勢力圏を拡大し続けている。

訪中したプーチンと習近平 SPUTNIK PHOTO AGENCY-REUTERS

ロシアにとっても悪夢

筆者は2月、国立シンガポール大学中東研究所の学術会議で報告を行ったが、この会議では何人もの専門家が、ミャンマーからジブチ、ドバイに至る広大な地域で戦略的地位を確立しようとする中国の計画を分析した。

中国の大規模港湾・鉄道プロジェクトは、パキスタンの港町グワダルだけでなく、エジプト、イスラエル、ギリシャ、チェコまでも標的にしている。巨大経済圏構想「一帯一路」が世界秩序の再編を目指していることは周知の事実だ。

中国は既にアフリカの主要な貿易相手国だ。中東の石油と天然ガスに対するアメリカの関心が低下するのを尻目に、エネルギー需要旺盛な中国はその地位を奪おうとしている。

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