中国で「黄帝祭典」盛大に行うもネット民は無反応――「令和」との違い
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月9日 13時41分
4月7日、中華民族の始祖で最初の帝王とされる黄帝祭典が中央政府の主催により、河南省新鄭市で盛大に行われた。愛国主義教育の一環だが、中国のネット民は無反応だ。「令和」に対してはまだ関心が高いのはなぜか?
「黄帝故里拜祖大典」とは
中国古代の神話伝説的な「三皇五帝」の内の一人である黄帝(紀元前2717年~紀元前2599年)を中華民族の始祖として祭ることが、愛国主義教育の一つとして、江沢民時代に始まった。以来、黄帝の誕生日とされている旧暦3月3日になると、河南省新鄭市でその祭典が行われるようになった。
もっとも、2002年には「炎黄文化節」(炎:炎帝。三皇五帝の一人)として河南省レベルで行なわれていたが、2004年からは新鄭市を「黄帝の故里」と位置付け「黄帝讃歌」まで歌うようになり、2006年からは「黄帝祭典」が国家行事に格上げされている。
結果、河南省人民政府以外に「国務院僑務弁公室、国務院台湾弁公室」などの中央政府が主催者側に入るようになった。ということは、中国国内の人民だけでなく、世界中の華僑華人や台湾の国民をも対象として、台湾統一の目的を同時に兼ねていることが分かる。
中華民族の始祖を祭ることによって、「すべて同胞だ」と言いたいのだろう。事実、「黄帝故里拝祖大典」のスローガンの一つに「同根、同祖、同源」がある。
いずれにしても愛国主義教育基地の一つに位置付けられているので、愛国主義の精神を植え付けようとしているのは明らかだ。
今年の黄帝祭典を動画で観よう
たとえば今年の「黄帝故里拜祖大典」に関して、4月8日付の人民日報海外版には、「2019年は、まさに、新中国(中華人民共和国)成立70周年記念であり、五四運動の100周年記念である。したがって始祖を祭る祭典では"愛国"主題と"国家"意識を強化することが、テーマとして流れていた」とある。
旧暦の3月3日は、今年は4月7日に当たる。例年になく報道が華々しいのは、70周年や100周年など節目の年ということだけではなく、「令和」への中国ネット民(ネットユーザー)の熱狂的な反応を意識しているというニュアンスを個人的には感じないではない。
先ずは当日の中央テレビ局CCTVの報道を新華網が動画で流しているので、そちらをご覧いただこう(画像が出てくるまでに沈黙の時間があるが、辛抱していると出てくるので、少しお待ち願いたい)。
黄帝を中華民族の始祖として敬うというのは、「中国共産党が全てであり、最高峰の存在であるはずの現在の中国」においては、何とも違和感を与える。しかし愛国主義教育というのは、1989年6月4日の天安門事件が西側諸国に憧れた若者たちによる民主化運動であるとして、「中国にも中国独自の伝統的な文化遺産がある」から「自分自身の祖国である中国を愛しなさい」という教育でもあるので、この矛盾から離れることができない。毛沢東による文化大革命で中国の伝統的な文化を破壊しつくしておきながら、今度は一転、中国の伝統的文化を讃え、習近平政権になってからは、それを「中華民族の偉大なる復興」と結び付けようというのだから、違和感がない方がおかしい。
この記事に関連するニュース
-
中国深センで日本人学校の10歳男児が襲われる 9・18「国辱の日」との関連は…
東スポWEB / 2024年9月19日 6時13分
-
「中華民族の偉大な復興」、「朝鮮を思うままにできる権利取り戻す危険な意味が」と韓国紙
Record China / 2024年9月7日 22時0分
-
重病説、求心力低下説、失脚説......「ポスト習近平」の中国に備えるべき時が来た
ニューズウィーク日本版 / 2024年8月28日 10時55分
-
尖閣めぐり問題発言、NHKの対策に中国メディア「本当のことを話すのを防止」
Record China / 2024年8月26日 12時0分
-
習氏、トウ氏継承で権威固め 台湾統一に決意、生誕行事
共同通信 / 2024年8月22日 21時48分
ランキング
-
1中国の危険情報「レベル0」維持 外務省「見直しは検討していない」子供連れには注意喚起
産経ニュース / 2024年9月20日 17時46分
-
2ベルリンの慰安婦を象徴する少女像、地元区長が撤去求める考え…韓国系市民団体と協議へ
読売新聞 / 2024年9月20日 19時28分
-
3深圳日本人学校の男児殺害に日本はもっと怒るべきだ
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月20日 15時58分
-
4ヒズボラとイスラエルの全面戦争、「不可避ではない」 マクロン氏
AFPBB News / 2024年9月20日 11時57分
-
5中国、日本の水産物「輸入を徐々に再開する」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年9月20日 16時13分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください