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インドの巧妙なキリスト教弾圧

ニューズウィーク日本版 / 2019年4月9日 18時20分



集会の自由は基本的人権に含まれているが、宗教行事の自由はその限りではない。近隣住民には居住用建物での宗教行事について警察に苦情を申し出る権利がある。ただしヒンドゥー教徒は堂々と自宅で宗教的な催しを開いているし、にぎやかに街を練り歩いたり、早朝から大音量のスピーカーで礼拝への参加を呼び掛けている。

UCFによると、今年も1月だけでキリスト教徒に対する暴行や脅迫が29件も報告されている(昨年は月平均20件)。

前出のプーガルはUCFの無償支援を受けて訴訟を起こしたが、1年たった今もまだ下級裁判所での審理が続いている。

許可は自治体の裁量次第

タミルナド州では、72年の建築基準法と94年の各種条例により、集団礼拝などに使用される建物の建設には自治体の許可が必要になった。しかも、治安や秩序が乱されると自治体が判断すれば許可の取り消しもあり得る。住宅内の集団礼拝の扱いはさらに曖昧だ。

穏健な国民会議派政権の時代にも、マディヤプラデシュ州とラジャスタン州で同様の州法ができた。00年には最も人口の多いウッタルプラデシュ州で、BJP率いる州政府が同様の法律を導入した。これにより宗教団体による建物使用が制限され、宗教的な活動を行う際には許可が必要になった。

18年には過激なヒンドゥー教徒による教会襲撃が繰り返され、教会の閉鎖が相次いだ。その数はウッタルプラデシュ州で少なくとも55件、ウッタラカンド州で25件、タミルナド州で19件とされているが、実際の件数はもっと多いはずだ。

ウッタラカンド州の都市ハリドワール近郊出身のマンゲ・シンは、州の85集落にある自宅兼教会のまとめ役を務めている。ここでも警察によって7つの教会が完全閉鎖に追い込まれたという。

シンが運営している教会も9年前の設立以来、ヒンドゥー至上主義者らに少なくとも25回は襲撃されている。だが逮捕されるのは、たいてい牧師のほうだ。シン自身も11年以降、祈禱を行ったという理由や、地元民を無理やりキリスト教に改宗させたとの虚偽の申し立てにより、32回も逮捕されている。

UCFなどの昨年の報告によると、ウッタルプラデシュ州だけでキリスト教徒を襲撃した事件は国内最多の年間129件に上っている。

同州スルタンプルの牧師ラジェシュ・クマールは、昨年まで10年間、自宅で教会を開いてきたが、活動停止に追い込まれた。84年に結成され、デリーを拠点に活動しているヒンドゥー系過激派組織「バジュラン・ダル」のメンバーに礼拝を妨害されたからだ。

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