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イスラエル総選挙:中東和平支持の中道勢力がタカ派与党に敗れた訳

ニューズウィーク日本版 / 2019年4月11日 18時13分

ガンツらが代案を出さなかったおかげで、ネタニヤフは安全保障に強い「ミスター・セキュリティー」のイメージをまんまと維持しきったばかりか、ガンツらを守勢に追い込むこともできた。中道勢力が政権を握れば、パレスチナ国家の樹立が容認され、その結果「ユダヤ国家の存立が危うくなる」と有権者を脅したのだ。

軍と情報機関の元幹部らから成る防衛専門家グループは長年、ネタニヤフとは正反対の議論を展開している。

イスラエルが「ユダヤ国家」および「民主国家」として存続するための唯一の解決策は、パレスチナ国家の樹立を認める「2国家共存」である──「平和と安全保障協会」、さらに最近では「イスラエルの安全保障のための司令官たち」など、いくつかの権威ある防衛シンクタンクがこう論じており、多数の元将校や情報機関の元トップもこの見解を支持している。

永遠に失われる?2国家共存

ガンツらが2国家共存という解決策を具体的に示さなかったおかげで、ネタニヤフは現状の入植政策、つまり反対派の言う「じわじわと併合を進める」政策から、極右が主張する「占領地の全面的な併合」へと大胆に踏み込むことができた。

かくてネタニヤフは投票日の3日前、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地をイスラエルに併合する計画を発表した。右派の支持を固めるためだ。

もしガンツらが入植地の併合はイスラエルの国益を脅かす恐れがあると主張していたら、ネタニヤフもここまで強気の発言はできなかったはずだ。

ネタニヤフは2009年6月に行った演説では2国家共存を支持していたが、その後に約束を取り下げた。もしも入植地の併合が実施されたら、2国家共存は永遠に葬り去られることになる。

最近の選挙でリクードを率いる現職首相に勝った元軍人は、1992年のラビンと1999年のバラクだ。2人とも現職の政策に対する明確な代替案を提示して有権者の支持をつかんだ。国民の安全を守るには何が必要かを堂々と論じて、中道左派政権を樹立できたのだ。だが左派が絶滅寸前に追い込まれた今日では、このシナリオは実現不可能だ。

Guy Ziv, Assistant Professor, American University School of International Service

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.


ガイ・ジブ(アメリカン大学スクール・オブ・インターナショナル・サービス助教)


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