平成の日本:「新しい不平等」の受け入れと、無関心の仮面の下に見たもの
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月12日 17時20分
平成の幕が下りようとしている今、誰もが「新しい不平等」を当たり前に受け入れているようだ。引きこもりやパワハラなど、二極化の時代に私が書いてきたさまざまなテーマも、今ではどこにでもある現実だ。
私は本誌を辞める前に書いた記事で、神奈川県厚木市近郊の搾取工場で働くペルー人を取り上げた。無保険者で、子供が通う公立学校にはスペイン語を話せる教師はおらず、日本語の補習授業もなかった。外国人労働者の底辺層を懸念する、早めの警告だったと言えるだろう。
誤解しないでほしい。私が「平成の記者」として取材した全ての記事が、気の重くなる話というわけではない。
米ニューズウィークは1993年6月にアメリカのレズビアンを特集した。日本版として記事を追加することになり、私は東京の抹茶カフェで、快活な若い女性に取材した。彼女は職場では同性愛者であることを隠していて、しつこく予定を聞いてくる男性に、今夜は「ボーイフレンド」に会うと言っていた。ほかにもカミングアウトをしている勇敢な活動家たちに話を聞いて、平成の無関心な仮面の下は、私が思っている以上に沸き立っていると知った。
最近、私は再び東京で暮らしている。若者に個人主義が浸透し、NPOやシェアオフィスが急増して、地元の図書館では高齢のボランティアが外国人に日本語を教えている。
本誌で過ごした日々を振り返ってみれば、平成は私にとって素晴らしい時代だった。しかし今、私は昭和の終わりにも感じたように、日本の未来に困惑している。あまりに多くの混乱と、あまりに多くの変化。理解する唯一の方法は、中に飛び込んで、取材し、分析して、書くことだ。
ニューズウィーク日本版が日本の未来をどのように伝えていくか、私は楽しみにしている。
<「ニューズウィークが見た『平成』1989-2019」掲載>
「ニューズウィークが見た『平成』1989-2019」書き下ろしコラム
長岡義博:平成は日本人に「無常」を教えた──バブル崩壊から原発事故、そして次の「非常識」
ピーター・タスカ:失われた20年に「起きなかったこと」に驚く──平成は日本を鍛え上げた時代
コリン・ジョイス:国技館で天皇を見た、平成は立派で前向きな時代だった
※詳しくは「ニューズウィークが見た『平成』1989-2019」をご覧ください。
デーナ・ルイス(ジャーナリスト)
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