それでも火星旅行の実現がまだまだ遠い理由
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月15日 10時30分
2年の旅に耐えられない
2016年にはエクソマーズの探査車を積載した着陸機が着陸に失敗し、火星に激突した。コンピューターが着陸機の高度を読み誤り、地上約4キロを降下中にエンジンを停止させたという。「だが幸い、データは(周回機などを通じて)確保できた」と、ESAのヤン・ボルナー事務局長は言う。
ドナルド・トランプ米大統領は、火星での有人探査を2033年までに開始するようNASAに要請した。スペースXのイーロン・マスクCEOも火星旅行に意欲的だ。だが47歳のマスクと違い、64歳のボルナーは自分が生きているうちにドナルド・トランプ米大統領は、火星での有人探査を2033年までに開始するようNASAに要請した。スペースXのイーロン・マスクCEOも火星旅行に意欲的だ。だが47歳のマスクと違い、64歳のボルナーは自分が生きているうちに火星旅行が実現するとは思っていない。
「数十年以内の火星旅行の実現を夢見る人々は危険性を度外視している。エンジンや推進システムさえ向上すれば行けると思っている」と、ボルナーは言う。「火星に行くだけで約2年かかる。宇宙線が飛び交う過酷な環境で人間が2年も生きられる宇宙船は、まだ存在しない」
宇宙船内では対応できない健康面や技術上の問題にぶつかる可能性もある。「人間はいずれ火星に、さらにその先に足を踏み入れるだろう。ただし真剣にやれば、だが」
<2019年4月16日号掲載>
※4月16日号は「世界が見た『令和』」特集。新たな日本の針路を、世界はこう予測する。令和ニッポンに寄せられる期待と不安は――。寄稿:キャロル・グラック(コロンビア大学教授)、パックン(芸人)、ミンシン・ペイ(在米中国人学者)、ピーター・タスカ(評論家)、グレン・カール(元CIA工作員)。
キャサリン・ハイネット
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